コモンズ投信が主催する社会起業家育成支援プログラム『コモンズSEEDCap』の最終候補者に、代表渡部が選ばれました。
本記事は、渡部の7分間のスピーチの内容を文章として書き起こした記事になります。
こんにちは。
NPO法人WELgeeの渡部清花です。WELgeeはWELCOMEとrefugee(難民)の組み合わせです。
「難民」と言う言葉から、みなさんどんなイメージが浮かびますか?
たくさんの人が乗って海を越えるボート、難民キャンプの白いテント?
インドシナ難民=ボートピープルを思い出す世代の方もいるかもしれません。
世界で7000万人が強制的に家を追われていると聞いたら、これは大問題だと思うかもしれません。
確かに大問題です。
でも今日お話ししたいのは、戦後最悪とも言われるこの危機をただ見ているだけではなくて、日本にいる私たちが、日本で、解決の一手を担えるチャンスがある!ということなのです。
ちなみに私たちは、そんな「難民」と呼ばれる人たちと今、一緒に暮らし、一緒に活動しています。故郷の料理を振舞うことも、たまに喧嘩することもあります。迫害、テロ、紛争などから逃れざるを得ない人々はいても「難民さん」なんていません。

そこにいるのは、ユニークな個性。電気エンジニア、フォーク歌手、医者の卵、キックボクシングの先生、NGO職員、プログラマー、お母さん、起業家だっています。
大学時代バングラデシュにいた私は卒業後、初めて上京してきました。若者が集うあるワークショップで、日本にも難民がきていることを知って、「日本の過疎地域が難民を受け入れて新しい風を吹かそう」と発表したのですが、反応がとても冷たかったのを覚えています。

「日本にもテロが起きたら怖い」「日本人でもっと困っている人がいるんじゃないの?」
会場をネガティブな雰囲気にした「難民」とは誰なのか。会いに行こうと思いました。
でも、どこにいるかもわかりません。
渋谷駅、日比谷公園、埼玉の蕨市…人に聞いて、足を運び、少しずつ繋がりました。日本には政府の難民キャンプやシェルターがないので、モスクでの仮住まいや最悪、野宿になる人もいます。
24時間のマクドナルドで朝まで話しこんだり、寝袋でみんなで寝たりする中で、聞いたのが、
「今度の選挙が誰も死なずに終わるように、日本から仲間を手伝ってる」
「ブロックチェーンの技術を使って経済圏を作りたい」
何だこの輝く人たちは!と、聡明で優しい彼らの存在に、好奇心が掻き立てられました。WELgeeは2016年、こうした対話から始まりました。
では彼ら「難民」は日本でどう暮らしているのか。その前に、実は彼らは「難民」でもなかったのです。「難民申請者」つまり、日本政府が難民として認定する前の人たちでした。日本で昨年、認定されたのは42人。難民申請自体は1万を超えていました。つまり、ほとんどが難民にもなれない「難民申請者」です。

こないだ会ったスリランカの男性、認定まで12年かかったそうです。コンゴの友人は、3年半、一度も審査のインタビューにも呼ばれていません。
なぜ、彼らはこんなにも待ちぼうけなのでしょうか?まず、日本の審査基準が相当厳しいと言われています。そしてそもそも、難民条約が時代に即していない、全然使えないじゃん!という衝撃を共有したいのです。
難民条約ができたのは1951年です。想像してみてください。私たちのおばあちゃんがまだ子供の頃です。時代はものすごいスピードで移り変わり、グローバル化は恩恵も混乱ももたらしています。当時は想定されていなかった人たちの存在があるのです。
例えば、「LGBTQ難民」。男の子が男性が好きだというだけで、死刑になる国だってあります。ここ数年のジェンダーの捉え方の変化に難民条約は追いつきません。
例えば「環境難民」。グレタちゃんの力強いスピーチ、見た方も多いと思います。地球温暖化で水面が上がり、沈みかけている国があります。そうなると、国際条約だけをただ強く信じていても歯車が噛み合いません。試行錯誤の中で、新たな解決策が出てきたのが、まさに今なのです。
2016年、国連の場でニューヨーク宣言、去年、難民に関するグローバル・コンパクトが採択されました。「そういう横文字のトレンドっていろいろあるけど、また言葉だけでしょ、絵に描いた餅でしょ」という声もあります。
でも私は、大きな可能性を感じています。
なぜかと言うとこれは「難民条約ぴったりの”難民”に当てはまらなくても、別の方法で人間らしく人生を築く方法を見つけよう!」「同時に、受け入れ国の負担を価値に転換しよう」というものなのです。
さて、日本は何ができるでしょう。こうなったら、もう壮大な社会実験です。
多くの人の力を借りながら、WELgeeは、難民の就活に伴走する事業を始めました。就職を果たした7名の中には、企業にイノベーションをもたらす人材もいました。
起業経験もある西アフリカ出身のSさんは、アフリカ進出を目指す、上場企業の中核社員として採用。
「まだ1ヶ月だけれど、彼は既に会社に1年以上いるみたいだ。」
「新事業を成功に導いてくれる、一人の優秀なスタッフとして活躍してもらいたい」
社員さんたちの声です。

「難民に向いている仕事は何ですか?」と聞かれることがあります。
これは「人間に向いている仕事は何ですか?」というくらい、大雑把すぎる質問です。
共通点があるとしたら、いつか平和になる祖国や世界の担い手だということ。
私たちが「社会課題」だと思っていた人たちは、実は、社会課題を解決する存在でした。
難民を助けてあげよう、ではなく、I wanna join you !
「一緒に未来を作ろう」と言う当事者たち、そして日本社会を構成するみなさんが私たちのパートナーだと思っています。
数ヶ月前…入国管理局の収容施設で亡くなったナイジェリアの方の死因が「餓死」だったことが明らかになりました。今日も、長期に渡る収容に抗議して、100人以上がハンガーストライキをしています。その中には、国に戻れない人たちも大勢います。
「明日、入管に行くけど、収容されて戻ってこれないかもしれないから電話したよ」と友人から連絡がくることもあります。
悔しいです。日本ではこんな現状がずっとずっと変わってきませんでした。
人の可能性を殺すのではなく、活かせる社会に私は生きたい。
みなさんぜひ力を貸してください。
未来は変えられると信じています。
なお、SEEDCap最終選考の結果は6月上旬に発表される予定で、選考された起業家は、今年10月3日に開催される社会起業家フォーラムにて、表彰される予定です。
「難民人材で、組織が変わる」JobCopass

スピーチ中に登場した、西アフリカのSさん。このような活躍の事例をより多くの企業様で作り、かつ企業様のダイバーシティ・グローバル化を推進するために、WELgeeでは、人材紹介サービス「JobCopass」を提供しています。
認定NPO法人アジアキリスト教教育基金
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