2020/10/22 ハチドリマガジン

ハチドリマガジン Vol.5を配信しました!〜食品ロスゼロを目指して〜

ハチドリマガジン Vol.5
10月は食品ロス削減月間。食品ロス問題の専門家・井出留美さんもハチドリユーザーです。この記事では、食品ロスの現状と業界の事情、海外での取り組み、いま私たちにできることなど様々なお話を伺っていきます!
今回話を聞いたのは・・・
  photo   株式会社美ら地球 代表取締役 社長
 
  奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)、青年海外協力隊を経て、日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。食品ロスを全国的に注目されるレベルに引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞。  
photo   聞き手 ライター佐野
震災をきっかけに食品ロスの専門家に
佐野   井出さんは、食品ロス問題を扱うジャーナリストだと伺いましたが、この問題に関心を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?
     
井出   2011年に起こった東日本大震災です。当時は、食品メーカーの広報室長として働いており、会社として被災地に自社商品を配布するということで、私も現地に足を運んだのですが、そこで理不尽な理由で無駄になってしまう食べ物を見ました。
     
佐野   具体的にはどのようなことが起こっていたのでしょうか?
     
井出   たとえば、同じ食べ物なのにメーカーが違って平等じゃないから配れないとか、避難所の人数に少し足りないから配らないとか、食品が不足していたのにもかかわらず、納得できない理由で沢山の食べ物が無駄になってしまっていたんです。
     
井出   食べられるけど食品としては流通させられない賞味期限接近の製品などを寄付するフードバンクの取り組みを会社として行っていたので、以前から食品ロスに関心はあったのですが、これが大きな契機となりました。
業界のルールにより
廃棄されてしまう食べ物
佐野   全世界の食料の3分の1が捨てられてしまっていると伺いました。
     
井出   そうです。全世界の食料の3分の1の約13億トンが毎年捨てられていると言われています。日本では612万トンですが、これは東京都民1,400万人が1年間に食べる量と同じくらいの量なんです。
     
井出   一方で、世界の先進諸国による途上国への食料援助の量は年間390万トン。日本で捨てている食べ物の方が、食料援助量の1.6倍も多いことになります。
     
佐野   世界の中での食料の分配は、非常に偏っているんですね。
     
井出   はい。日本で発生している食品ロスの約半分がコンビニやスーパー、レストランなどの事業系から、残り半分が家庭から出ていると言われています。
     
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(いつも奈良の講演会場に駆けつけ、著書を販売してくれる書店が、2020年7月、著書コーナーを作ってくれた 撮影:奈良啓林堂書店)
     
佐野   事業系から食品ロスが発生してしまう主な原因は何なのでしょうか?
     
井出   事業系から出る食品ロスの大きな原因となっているのが商慣習です。業界内のルールですね。その1つが「欠品ペナルティ」です。小売店から注文を受けた分を納品できなくなった場合に、食品メーカーが支払うペナルティのことです。
     
井出   予想より売れてしまったり、生産が間に合わなかったりといった何らかの理由により、メーカーがお店に納品できないと、売れるはずの売り上げが立たないですよね。その分をお金で補償してください、というルールです。
     
佐野   なぜ小売店はメーカーに対してそんなに強く出られるのでしょうか?
     
井出   メーカーは、売っていただく立場。小売店は、数あるメーカーの商品から選んで売ってあげる立場。メーカーが欠品を起こすと小売店から「取引停止」と言われます。だからメーカーは小売店に取引を停止されるのを恐れているんです。
     
井出   例えば、大手コンビニ側から見たら、ジュースひとつとっても色々なメーカーがいるので、1つのメーカーと取引しなくなってもさほど影響は受けないですよね。選べる立場にある小売店の方が強いという業界内のヒエラルキーがあるんです。
     
佐野   メーカーは常に弱い立場なのですか?
     
井出   いいえ。メーカーのさらに下には、原材料メーカーや生産者がいます。例えば、小麦をどこのメーカーから買うか、どの農家さんから買うか、メーカーは選べる立場にあります。
     
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(これまで500回近く、国内外で食品ロスの講演をしてきた。2019年11月、京都生協での講演には、かつて広報を務めていたフードバンクの仲間も駆けつけた 撮影:京都生協)
     
井出   他にも「3分の1ルール」というものがあるのですが、たとえば、ある食品の賞味期限が6ヶ月だとすると、最初の2ヶ月(3分の1)の間に、メーカーは小売店に納品しないといけません。遅れてしまうと、コンビニやスーパーに納品できなくなってしまうんです。納品後、小売店側も、6ヶ月の賞味期間ギリギリまで売るということはしません。4ヶ月目で販売期限が切れるので、棚から撤去してしまいます。
     
佐野   食べられるのに売れない、という悲しい状況が起こってしまうんですね。
     
井出   はい。2012年から国と食品業界は、食品ロスを減らすためにこのルールを緩和してきています。それでも、2020年7月現在、3分の1よりもっと短くて厳しい「5分の1」「6分の1」という納品期限を課す小売がいることを、メーカー取材で聞いています。
     
井出   この状況に対し、メーカー社員は、たとえ問題意識を持っていても、売り先を失ってしまうのを恐れてコンビニやスーパーなどに声を上げられないという現実があります。
ちょっとした一手間で家庭からの食品ロスをなくそう
佐野   日本の食品ロスの残り半分は家庭から発生しているとのことですが、具体的にどんなところから出てしまうのでしょうか?
     
井出   食品ロスの46%は一般の家庭から出ています。その内訳は主に3つあるのですが、1つ目は過剰除去です。野菜の皮を厚く剥きすぎたり、お肉や魚の食べられる部分まで捨ててしまうといったものです。2つ目は、直接廃棄。沢山買って冷蔵庫に入れておいたものの、食べきれずに捨ててしまうことですね。そして、3つ目は作りすぎです。
     
佐野   どんな食べ物が捨てられてしまいやすいのでしょうか?
     
井出   最も捨てられやすいのは野菜です。もやしやニラは痛みやすいですし、キャベツなどは一玉が大きいので、特に一人暮らしの方はダメにしてしまう人も多いようです。
     
井出   でも、保存方法はあるんです。キャベツであれば、芯をくりぬいて濡れた新聞紙などを詰めたり、爪楊枝を刺したり…。芯に成長点があるので、そこの働きを止めてあげると保存性が高まります。面倒臭いので、買ってきたらそのまま冷蔵庫へ入れる人も多いと思いますが、このひと手間をかけないと、野菜は悪くなりやすいんです。
     
佐野   買ってからのひと手間が、食べ物を長持ちさせる上で大切なんですね。
     
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(半干ししたきゅうりを香りのよいごま油、酢、だし醤油で漬けた。生で食べるより噛みごたえがあっておいしい 撮影:井出留美)
ゴミをゴミとして処分しないで
佐野   食品ロスは、地球環境にも大きな負荷をかけていると伺いました。食品には水分が含まれているので、燃やす際にかなりのエネルギーが必要だとか。
     
井出   そうですね。日本は、ほとんどの自治体で、食べ物をゴミとして燃やしてしまっていて、処理施設の維持管理も含め、ゴミ処理には年間2兆円以上かけているんです。食品リサイクルセンターの社長は、そのうち40〜50%が食べ物だろうと話していました。
     
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(オランダではショッピングモールのレストランから排出される食品ごみを資源として活用しており、この仕組みをアフリカでも実践している 提供:The Watse Transformers)
     
井出   欧州では、りんごの芯やバナナの皮、剪定された枝、落ち葉などは「オーガニック」というくくりで分別し、資源として扱われることが多いです。2019年7月にオランダを取材したところ、「廃棄物変換器(トランスフォーマー)」でこれらを発酵させ、発生したガスをバイオマスエネルギーにして電力として利用したり、堆肥や飼料としても活用したりしていました。
     
佐野   素晴らしいですね!サーキュラーエコノミーの考え方ですね。
     
井出   そうですね。スウェーデンのマルメ市では、バナナの皮やコーヒーのかすなど、食べられない部分をリサイクルした100%再生可能エネルギーでバスを走らせる取り組みも行われています。ゴミも資源として活用しているのは素晴らしいですね。
     
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(スウェーデン・マルメ市は2020年までに市営の組織が使うエネルギーを100%再生可能エネルギーに転換することを目指している。2019年末までに88%を達成し、2020年7月現在、12月末までに98%は達成できる見込み 撮影:井出留美)
皆のひとしずくが大きな流れに
佐野   井出さんはご自宅兼オフィスの電気をハチドリ電力にお切り替えいただいたんですよね。ありがとうございます!
     
井出   はい。ハチドリ電力に切り替えて、弊社の公式サイトでも紹介しています。
     
佐野   嬉しいです!お申し込みの決め手となった理由は何だったのでしょうか?
     
井出   ハチドリ電力の名前の由来にもなっている「ハチドリのひとしずく」の物語は以前から知っていて、本を持っているくらい、大好きなストーリーなんです。
     
井出   周りでも、環境に配慮して自宅やオフィスの電気を切り替える人が増えています。2018年に環境系の資格を取るために受講した講座の同期も切り替えていましたし、2019年のスウェーデン取材でお世話になった人も自然電力を使っていました。それで私も切り替えを検討していたのですが、ちょうどそのタイミングでハチドリ電力を知ったんです。
     
井出   限りある資源ですから、あるものを使った方がずっと良いに決まっていますよね。欧州の取り組みに関する記事を書いているので現地を訪れたのですが、スウェーデンのマルメという市では、2020年までに市営の全ての電気を再生可能エネルギーにすることを目指しており、2019年時点で、すでに88%、自然エネルギーへの切り替えが済んでいたんです。
     
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(スウェーデン・マルメ市。デンマークのコペンハーゲンから電車で15分ほどで移動できる 撮影:井出留美)
     
井出   スウェーデンでは、1970年代のオイルショックを契機に、有限な地下資源である石油ではなく、地上で再生できる再生可能エネルギーに舵を切ったそうです。50年前から子どもたちに環境教育をしてきて…。学校の教育はもちろんですが、それだけで終わらせず、企業が消費者に対して消費者教育として啓発している部分も素晴らしいと思います。
     
井出   スウェーデンでは、1970年代のオイルショックを契機に、有限な地下資源である石油ではなく、地上で再生できる再生可能エネルギーに舵を切ったそうです。50年前から子どもたちに環境教育をしてきて…。学校の教育はもちろんですが、それだけで終わらせず、企業が消費者に対して消費者教育として啓発している部分も素晴らしいと思います。
     
井出   私が食品ロス問題に取り組み始めた12年前の2008年と今では、世の中の認識も大きく変わってきました。「ハチドリのひとしずく」の物語の通り、皆が自分にできることをやっていけば、ひとしずくが、やがて大きな流れになるのではないかと信じています。
     
佐野   小さな一歩でも、皆で取り組んでいきたいですよね。ハチドリ電力では、電気料金の一部を社会のために活動する人や団体に寄付できる仕組みになっていますが、寄付先にはどちらを選択されましたか?
     
井出   2008年の食品メーカー時代からフードバンクに携わってきたこともあって、フードバンクの活動を行っているフリー・ザ・チルドレン・ジャパンさんを選びました。
     
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(2017年から農林水産省事業でASEAN諸国10ヵ国の大学で、年に2〜3回、講義やワークショップを行っている。現地の農産物をロスにしない食品加工や商品開発のワークショップでグループごとに競わせると、生徒たちは嬉々として取り組む  撮影:農林水産省)
     
佐野   では最後に、私たち一人一人は、食品ロスや地球温暖化といった問題に対してどのように取り組んでいくべきか、井出さんのお考えをお聞かせいただけますか?
     
井出   無理して頑張ろうとしても続かないので、無理のない、身近なところから、ささやかでも始めることが大切だと思います。その取り組みによって気持ちがすがすがしくなることが、続く秘訣です。
     
井出   最近、国内外で取り組む人が増えている「ゼロ・ウェイスト」の運動、ゴミが少なくなるという物理的なメリットもありますが、気持ちがスッキリすることで続けられる人も多いです。
     
井出   私自身は、野菜の皮などはベジブロスという野菜のだしにして、そのあと家庭用生ごみ処理機で乾燥させ、その後、コンポストにしています。においもないしコバエもこない。ごみ出しの回数も減るし、スッキリして気持ちがいいので続けられています。もう700回も、ごみ処理機の前後で重量を測っているんですよ。これまで減らしたゴミは全部で174kg。処理機をかけると、平均で61%もゴミ重量が減りました。
     
佐野   私もなるべくゴミを出さないことを意識し始めてから、毎週のゴミ出しの時の罪悪感が減って、すがすがしい気持ちになれている気がします。
     
井出   最初から大きなことを目指すとくじけてしまうので、自分の興味にあったことを見つけて、自分なりに、気持ちがスッキリすることをやってみると良いと思います。
     
佐野   そうですよね。皆が小さなことから始めて、大きな変化にしたいですよね。インタビューへのご協力、ありがとうございました!
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