現場に立ち続ける、
映像ディレクター
映像ディレクター、ジャーナリスト、会社代表。成田さんはこれまで、
さまざまな立場で映像制作に携わってきました。
そのなかで、自身の仕事を表す言葉として選んでいるのは、「映像ディレクター」や「監督」です。取材を行うことも多いものの、文章を書くことを主な仕事とするジャーナリストとは
少し異なります。
成田さんは、映像をつくる過程で人や出来事と向き合い、その過ごした時間ごと
作品にしてきました。
これからの10年を考えたとき、成田さんが選んだのは、組織を大きくしていくことよりも、
自分自身が現場に立ち続けることでした。いまも、国際NGOの一員として、
最前線の現場に立ち続けています。

届けるための技術と、
届けたい本物
成田さんのキャリアは、映像そのものよりも先に、「どう届けるか」を学ぶことから始まりました。
もともとはマーケティングや情報の届け方を学び、東京では映像広告の制作に携わってきました。
その経験を重ねるなかで、映像ディレクターとして声がかかり、
仕事の幅も広がっていったといいます。
一方で、時間をかけてつくった映像が、あっという間に消費されていくことには、
ずっと違和感がありました。
そんな成田さんにとって大きな転機となったのが、2020年から2021年にかけてNHKから取材を受けたことや『生きてくれてありがとう』という作品との出会いでした。これをきっかけに、映像をつくるだけでなく、取材を通して人や社会と向き合う活動が、本格的に始まったといいます。
これまで成田さんが向き合ってきたのは、若者や子ども、そして動物たち。
「いい意味で純度が高いというか、本物かどうかをすぐに見抜くんですよね。だからこそ、AIには作れないものがあると思っていて。当事者性を持って、言葉を超えたところまで届けることを大切にしています」
だからこそ、成田さんが大切にしているのが、「どう撮るか」だけではなく、「どう向き合うか」ということなのかもしれません。
ただ、どれほど大切なものでも、想いだけでは届かないこともあります。届けるための設計がなければ、せっかくの価値あるものも、見つけてもらえない。
マーケティングや広告の仕事を通して「届け方」を学んできた成田さんだからこそ、そのことも実感してきました。
「情緒なのか、スペックなのか。何かを届けるとき、相手が求めているものを見極めて、
差し出すものを変えているんです」
本物と向き合うこと。そして、それを届けること。成田さんにとって、そのどちらも欠かせないものなのかもしれません。

「当事者」として向き合う、
その先に生まれる映像
現在、成田さんの仕事の中心となっているのが、国際NGOでのカメラマンとしての活動です。
そこには、一般的な取材とは少し違った難しさがあります。
「NHKですと名乗れば伝わりやすいんですけど、僕らは支援もするし取材もする立場なので、現地の方に理解してもらうのがすごく難しいんです。物資を届けたり、そばに寄り添ったりする時間の積み重ねがあって、ようやく『私の家を見せようか』という瞬間が訪れます」
まずは支援する人として、その人のそばにいる。時間を重ね、少しずつ信頼が生まれていく。
その先に、初めて見せてもらえるものがあるのだといいます。
こうした向き合い方の根底にあるのが、成田さんが大切にしている「当事者性」です。
緊急支援の現場でも、それは同じでした。被災地のように言葉が通じない場所でも、相手と同じ目線に立ち、その人の状況を自分ごととして受け止めようとする。そんな姿勢は、言葉がなくても伝わることがあるといいます。
その姿勢は、動物との向き合い方にも表れています。誰にもなつかなかった保護犬が、成田さんにはすっと寄ってくることがあるそうです。
乳がんで亡くなった旅館の女将さんの映像には1年。渡り鳥を追い続けてきた方の物語には
2年をかけて向き合いました。時間をかけて一人の人と向き合うなかで、
映像がその人そのものになっていく感覚があるといいます。

成田さんにとって映像は、作品を完成させたら終わりではありません。撮影を終えたあとも、
その人の物語として、この先も残り続けていくものなのだそうです。
人と向き合うときも、動物と向き合うときも。外側からその姿を記録するのではなく、
その場にいる一人として相手と向き合う。
成田さんが大切にしている「当事者性」は、そんなところにも表れているのかもしれません。
いつか、タイタニック
ぐらいの作品を
先日、とある災害救助犬の短編作品を公開したばかりの成田さん。
その犬は、動物愛護センターで殺処分寸前だった元野犬の雑種犬でした。
血統書のない犬が災害救助犬として活躍することは珍しく、その物語は多くの人に知られ、
国際NGOの活動を広げる大きなきっかけの一つにもなっています。
「この犬の物語を、いつか映画にしたい。」
それが成田さんの今の夢です。
そして、小さな声を届け続ける成田さんが、映像を続ける先にいつか実現したい
大きな目標もあるそうです。
「死ぬまでにタイタニックぐらいの作品を作りたいんです」
10代から映像を続けてきた成田さんが惹かれているのは、まだ知られていない人や生き物の物語が、映像を通して多くの人に届いていく瞬間です。この犬のように、誰にも知られていなかった小さな存在が、一つの物語をきっかけに、多くの人に知られていく。そこから、さらに大きな広がりが生まれていく。そんな変化に、映像の面白さを感じています。
東京を初めて訪れ、渋谷のスクランブルスクエアを歩いたとき、「世の中には普通の人の方が多い」と感じたことも、その感覚につながっています。
特別な誰かだけではなく、一人ひとりの人や生き物が、それぞれに物語を持っている。
そうした存在を、余計なものを足さず、できるだけそのまま映像に残す。
すると、ときに想像していた以上のインパクトが生まれ、多くの人へと広がっていくことがある。
小さかったものが、物語を通して大きな広がりになっていく。
成田さんが目指す「タイタニックぐらいの作品」の背景には、
そんな映像への思いがあるのかもしれません。
誰もが使うのに、
意識されない電力
成田さんが環境問題に関心を持つようになったきっかけは、友人の取材についていったことでした。その後、北海道・積丹やバングラデシュを訪れ、実際に現地を取材するなかで、環境問題への関心はより深まっていったといいます。
一方で、環境問題を多くの人に伝えていくことには、難しさもあります。
NPOなど、現場で重要な活動に長けている団体であっても、
その活動を社会に届けるためのマーケティングや発信のノウハウが十分にあるとは限りません。
「とりあえず動画を作りました」では、誰にも届かない。
だからこそ成田さんは、「誰に届けたいのか」によって、映像のつくり方そのものを変えています。
若い世代に向けて発信する場合はショート動画を活用する。
一方で、その団体の強みがオフラインでの活動にある場合には、上映会などで
じっくり見てもらえる長さの作品をつくることもあるそうです。
伝えたい内容を変えるのでは
なく、
届ける相手に合わせて、
伝え方を考える。
これまで映像広告やマーケティングの仕事を通して培ってきた「届け方」への視点は、環境問題を伝えるうえでも生かされています。
そうした環境問題のなかでも、特に伝える難しさを感じているのが「電力」です。
実際に、2024年に火力発電事業者10社を相手取って起こされた『若者気候訴訟』。
成田さんは、声をあげた原告の若者一人ひとりに会いに行き、その言葉を映像として発信してきました。しかし、電力に関する投稿は、ほかのテーマと比べてもなかなか見てもらえないことがあるといいます。
電力は、毎日の暮らしに欠かせないものです。それなのに、普段はあまり意識することがない。
だからこそ、環境問題のなかでも、電力は特に伝えにくいテーマなのかもしれません。
一方で、成田さんは、そこにこそ可能性があると感じています。 難しいものを、そのまま難しく伝えるのではなく、もっと面白く、興味を持ってもらえる形にできるのではないか。これまで「どう届けるか」を考え続けてきた成田さんだからこそ、電力という、誰もが使っているのに意識されにくいテーマにも、まだ新しい伝え方があると感じているようです。
小さき声を守る
一人の力だけで、大きな社会問題を解決することはできないかもしれません。それでも成田さんは、声にならない声を一つひとつ記録し、届け続けることをやめません。
小さな声が、
いつか大きな広がりになっていく。
それは、これまで成田さんが映像を通して見つめてきたことそのものです。
目の前にいる人や生き物と向き合い、
まだ知られていない物語を残していく。
その積み重ねが、誰かの想像力を開き、
行動のきっかけになる。

ハチドリ電力が大切にしている
「ひとしずく」の考え方とも、
どこか重なるように感じました。
小さな声に耳を澄まし、まだ知られていない
物語を、一人でも多くの人へ。
成田さんがこれから届けていく景色を、私たちも一緒に見つめていきたいと思います。
このたび成田淳さんを、ハチドリ電力アンバサダーとしてお迎えすることになりました。
これから成田さんの活動や、その先にある物語も、ハチドリさんにお届けしていきます。



