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食べ物は、命だ。

食品ロス問題ジャーナリスト・
井出留美さんが伝え続ける理由

食品ロス問題ジャーナリストとして、
長年にわたり「食べ物を無駄にしない社会」を伝えてきた井出留美さん。

ハチドリ電力とは6年前の2020年に出会い、それ以来、つながりを続けてくださっています。
そして今回、井出さんにハチドリ電力の公式アンバサダーにご就任いただくことになりました。

井出さんの活動は、「食べ物を無駄にしない」という言葉だけでは表せません。
食品ロスの問題を追いかけるなかで見えてきたのは 、食べ物がつくられ、売られ、
消費されるまでの仕組みや、その背景にある社会のあり方でした 。

なぜ、井出さんはこれほど長く食品ロスの問題に向き合い続けているのでしょうか。 そして、
そんな井出さんがハチドリ電力を選び、
つながり続けてくださっているのはなぜなのでしょうか。

これまでの歩みをたどりながら、
お話を伺いました。

なぜ、この問題に
向き合い続けるのか

井出さんが食品ロスの問題に向き合い続ける理由を尋ねると、返ってきたのは、
とてもシンプルな答えでした。

「5歳で食べ物に興味を持って以来、
ずっと食べ物が好きだからです」

食品ロスの問題に取り組み始めてから、
長い年月が経ちました。
その間にも状況は変わり、
井出さん自身も
さまざまな活動を続けてきました。

それでも、食品ロスという問題がなくなったわけではありません。

井出さんは、この問題の大きさについても率直に語ってくれました。

「食品ロスの問題は、自分が死ぬまで取り組んでも終わらないほど大きな問題だなと
感じています」

その現実を感じる出来事のひとつが、毎年続けている恵方巻きの売れ残り調査です。年々減ってきた実感がある一方で、2026年の節分にも、大手コンビニ一店舗で、日付が変わる直前に80本ほどの恵方巻きが残っていたといいます。

「寿司は大好きだし、貴重な資源のかたまりなので、捨ててほしくありません。
まだまだだなと思っています」

食品ロスがなくならない背景には、さまざまな要因があります。

「食品ロスの問題は、気候変動や農業、
流通、福祉など、
さまざまな課題とつながっています。ひとつ取り組むと、
また別の課題が見えてくる。
だから終わりがないんです。
やってもやっても終わりはありません」

一つのことをとことん突き詰めるのが自分に合っている。

そうして長く向き合い続けてきた井出さんですが、そもそも食品ロスという問題に出会った
背景には、震災より少し前の、ある経験がありました。

あの日、被災地で見たもの

当時勤めていた食品メーカーのアメリカ本社で、井出さんは「フードバンク」という
仕組みを知ります。

缶がへこんでいる。箱が少し潰れている。

それだけの理由で、まだ食べられるはずの食品が、
必要としている人に届かないまま捨てられてしまう。そのことに、疑問を抱く日々だったそうです。

でも、フードバンクは、商品として流通できない食品を、必要な人へと届ける活動でした。

社長とともに話を聞いて、2008年から日本でも食品をフードバンクに寄付することを始めました。

そんななかで迎えたのが、2011年の東日本大震災でした。

広報室長として被災地に入った井出さんは、そこでさらに強く心に残る出来事がありました。

メーカーが違うから配らない。人数に対して食品が少し足りず平等じゃないから配らない。
そんな理由で、支援物資が廃棄されていく。
まだ使えるものがあり、必要としている人もいる。
それでも、仕組みや都合によって捨てられてしまう。

広報室長として自社商品リリースを自粛し、4月末、社会に必要と思う食情報を発信しました。
全国紙の記者が「これこそ伝えるべきだ」と社名入りで大きく取り上げてくださいました。

被災地で支援物資をおろす井出さん
被災地で支援物資をおろす井出さん

伝える側にいる人間は、自分や自社の利益にとらわれず、今の社会に本当に必要だと
肚(はら)のそこから思うことを発信する。それが、結局は、自分・組織・社会のすべてを
活かすのだと確信しました。

仕事は好きだった、と井出さんは振り返ります。
それでも、会社を辞め、ご自身で起業する決断をしました。

会社の名前は「office 3.11」。

震災の起きた3月11日は、井出さん自身の誕生日でもあり、
運命的なものを感じてこの名前をつけたそうです。

「誕生日に発生した東日本大震災のとき、生きたくても生きられない命に恥じない
生き方をしたいと思いました」

このときに見たものだけでなく、もう一つ、井出さんの考え方に大きな影響を与えた
出来事がありました。

命を、二度死なせない

井出さんの父親は銀行員でした。転勤を繰り返し、46歳でようやく支店長になりました。

けれど、そのわずか5か月後、脳梗塞で急逝してしまいます。

「父親も46歳で他界し、
もっと生きられるはずの命が
失われるのは悲しいと感じました」

震災で見た、食べられるはずのものが捨てられていく光景。
そして、もっと生きられるはずだった父親の死。

井出さんと父
井出さんと父

「いつどうなるかわからないのだから、今、行動しなくては」。

井出さんは、人の命と食品ロスの問題に、
ある共通点を感じました。

「食品ロスも、本来食べられるために生まれたものが、その役目を果たせないまま
捨てられてしまうという意味では、人の突然の死と重なる部分があるように感じます。 もっと長く生きられるのに、生きられないからこそ、その命を慈しみ、
無駄にしないことが大切なんです」

命を無駄にしないという考え方について、井出さんは『捨てないパン屋の挑戦』(あかね書房)に
描かれているエピソードも紹介してくれました。 「モンゴルの人たちが、ひつじをさばいたら、
血を一滴も流させず、すべて食べ尽くす様子が描かれています」

目の前にある問題を見て「いつか誰かが変えてくれる」と待つのではなく、
自分ができることから始める。その考えは、食品ロスの問題に取り組むなかでも続いています。

見えてきた、社会の姿

食品ロスの問題を長く追いかけるなかで、井出さんが目を向けてきたのは、食べ物が捨てられる現場だけではありませんでした。

その背景には、食べ物をつくる人と、それを消費する側との間にある力関係があります。

「多くの先進諸国は低所得国などに
コーヒーやカカオ、野菜や果物など食べ物を
生産してもらっています。
でも、厳しい規格を設けて、そこからはじかれたものを
現地で捨てています。
なぜ、先進国が食べるものなのに、
相手の国が廃棄する労力や
コストを
負担しなければならないのか」

さらに、食品ロスを減らすことを、自分たちの国の中だけで考えてよいのかという問いもあります。

「SDGsで、自分の国の食品ロスが
減ったといって誇らしげに
アピールしていても、輸入している
先の国の食品ロスや廃棄まで
目を向けることが、
輸入国の責任ではないでしょうか」

フィリピンでモロヘイヤを活用した春巻きの作り方を教える井出さん
JICA海外協力隊時代 フィリピンでモロヘイヤを活用した春巻きの作り方を教える井出さん

食料自給率が37%まで落ち込んだ日本にとって、これは他人事ではありません。

日本で食べられるバナナの多くはフィリピンから来ていて、現地では農薬による健康被害や、
生産者に十分な利益が還元されない不平等が起きている、と井出さんは指摘します。

国内に目を向けても、コンビニ本部と加盟店の関係など、食べ物を扱う現場にはさまざまな力関係があります。本来、命を扱う生産者や作り手がもっと大切にされる社会であってほしい。井出さんは、そう感じているといいます。

だからといって、問題を「大企業か、小さな組織か」という構図だけで
捉えているわけではありません。

ただ井出さんは、こうした問題を「大企業か、小さな組織か」という
単純な構図では捉えていません。

「組織の大きさは、食品ロス問題に取り組む真摯さには関係ないと感じています。
むしろ、小さな組織が自然に、当たり前のように食べ物を売り尽くす、使い尽くす行動を
続けている例を何度も見てきました。肩書きや所属している組織のブランドなどでその人を
判断するのは好ましくないと感じます。そういう外側のものがなくても、
真面目に誠実に取り組んでいる人や組織が多くあるのを感じます」

そうした現実を見てきたからこそ、井出さんは、企業も、省庁も、NPOも、アカデミアも、
それぞれの強みを持ち寄って、対等に社会課題に取り組む社会を目指しています。

自分の身の回りから、日本のなかでも、世界でも。上下関係ではなく、それぞれが対等に
関われる社会であってほしい。

その考え方は、井出さんがハチドリ電力を選んだ理由にもつながっていきます。

食べ物を、捨てない。
電気を、選ぶ。

井出さんがハチドリ電力に申し込んでくださったのは、社名の由来にもなっている
「ハチドリのひとしずく」の物語を、以前から知っていたからでした。

「本を持っているくらい、大好きなストーリーなんです」

森が燃えている。動物たちは、われ先にと逃げていく。そんな中、ハチドリだけが行ったり来たりを繰り返し、くちばしに一滴の水を汲んでは、火の上に落としていく。「そんなことをして、何になるんだ」と笑う動物たちに、ハチドリは答えます。「私は、私にできることをしているだけ」。

井出さんがハチドリ電力を使い続けてきた理由を尋ねると、こんな言葉が返ってきました。

「2020年からずっと使い続けているのは、電気代の1%が応援したい社会活動の支援に
まわり、さらに別の1%が基金に充てられ、使えば使うほど自然エネルギーの発電所が
増える仕組みを評価しているからです」

食品ロスと電気という、一見別々に見える二つのテーマについても、井出さんは
明確なつながりを示しています。

「世界の温室効果ガス排出量のうち、約3分の1は食料の生産から廃棄までの
食料システムから出ています。中でも、食べられずに捨てられる食品ロスに由来するもの
だけで世界全体の8〜10%を占めます。温室効果ガスを減らすのに、
食べ物を捨てないことと、よい電気を選ぶことは地続きで同じことです」

井出さんは、ハチドリ電力を使い始めてから、周囲の人たちにもそのことを伝えてきました。

ハチドリ電力を使い始めてからは、まわりの人やニュースレターの読者さん、公式サイトを見てくださった方にも紹介してきました。実際に切り替えてくださった方も、10人以上いるそうです。

Save Food We Love

食べ物は、命そのものです。命をつなぎ、生きながらえるために、食べ物は欠かせない。
そんな考えを、井出さんは「Save Food We Love」という言葉で表しています。

食品ロスの問題に向き合い続けるなかで、井出さんは、日々の暮らしのなかでできることについても具体的に語っています。

「『ハチドリのひとしずく』のように、ひとしずくが集まると大きな力になります。お店では無理のない範囲で手前からとる。買い物に行くときは何か食べておくと無駄買いも減らせます。冷蔵庫に入れる量は全体の7割くらいにする。食べ物を食べきる。そして、電気を選ぶことも、その一つです。ささやかな一歩の力を信じ、自分の道を進んでいきましょう。」

一人ひとりが、自分にできることを続けていく。井出さんが食品ロスの問題と向き合うなかで、
伝え続けてきたことの一つです。

井出さんの写真と「SAVE Food WE LOVE」の文字
SAVE FOOD WE LOVE 撮影:望月みちか

そして今回、井出さんはハチドリ電力のアンバサダーを引き受けてくださいました。

「アンバサダーをお引き受けすることで、これまでご縁のなかった人にも
この想いを届けられるのではないかと
思いました」

食品ロスという大きな問題に向き合うことも、そのためにできることを一つずつ続けることも、
日々の暮らしのなかから始まります。


このたび井出留美さんを、ハチドリ電力アンバサダーとしてお迎えすることになりました。

これから井出さんの活動や、その先にある想いを、ハチドリさんにもお届けしていきます。

そして、「食べ物を捨てないこと」と「電気を選ぶこと」がつながっているように、
私たちも日々の暮らしの中でできることを、一緒に考えていけたら嬉しいです。

PROFILE

プロフィール

井出 留美さん

食品ロス問題ジャーナリスト

井出 留美

食べものは命。捨てられていくその命を減らすために、
書き、調べ、政策の場にも立つ食品ロス問題ジャーナリストです。

詳細プロフィール

食品メーカーの広報室長だった2011年、東日本大震災の食料支援の現場で、大量の食べものが捨てられていく光景に衝撃を受けました。その年、震災の日を冠した株式会社office 3.11を設立。以来、食品ロス削減推進法の成立に協力し、世界的連合Champions 12.3のメンバーとして、書くことと現場の両方から、食べものを捨てない社会の作り方を探しています。

経歴・実績

経歴
ライオン/JICA海外協力隊/日本ケロッグ
学位
博士(栄養学)/修士(農学)
国際的な役割
世界的連合 Champions 12.3 メンバー
委員・役職
水産庁 水産政策審議会特別委員/
おてらおやつクラブ 相談役
受賞
Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018
令和2年度 食品ロス削減推進大賞 消費者庁長官賞
著書
『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』
ほか、単著累計16万部超

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