目の前にあるものを、どう見立てるか。ReBuilding Center JAPAN・東野さんが考える豊かさ

株式会社ReBuilding Center JAPANさま
- 小売・商社
- 地域づくり・まちづくり
- ~100名

長野県諏訪を拠点に、解体される空き家や片づけ中の家から古材・古道具をレスキューし、販売やものづくり、空き家のリノベーションを手がける株式会社ReBuilding Center JAPAN(リビルディングセンタージャパン)。「いらない」とされたものを、もう一度見つめ直す。その先に、どんな価値が生まれるのでしょうか。「地域資源のリユースカンパニー」として10年を迎えたリビセン。地域資源を捉え直すまなざしと、豊かさについて、代表の東野唯史さんにお話を伺いました。
古材らしさを、手放してみる

リビセンを始めて、10年。このお仕事を、今、どんなふうに捉えていらっしゃいますか。
僕らは、空き家のレスキューをベースに事業を展開しています。やればやるだけゴミを減らせるし、地域のためになる活動に収支できちんとつながっている。そこは、始めたころから変わっていないですね。
ただ、届け方は変わってきました。最初は、古材を建材としてきちんと届けることを目指していました。DIYをする人や、移住してリノベーションをする人が使いやすい状態にして、古材を届ける。そういうことを大事にしていたんです。でも、レスキューする量が増えても、古材の売上だけではなかなか大きく伸びない。内装の流行も変わっていきます。そこで、古材らしい表現以外にも、削って綺麗な状態にした古材を使ってデザイン表現をするようになってきました。
届け方も見直していかれたんですね。
そうですね。「かわいい」「使いやすそう」。まずはそんな理由で手に取ってもらい、調べたら実は古材だった、という出会い方でもいい。古材を削ると、新品の木のような状態にすることもできます。いろんな暮らしのなかに取り入れてもらえれば、その分だけ古材を循環させられるんです。
普通のメーカーは、「こういう商品がほしい」というところから、ものづくりが始まると思います。でも僕らは、何をレスキューできるか、どんなサイズの材料があるかから考える。出だしが、全然違うんですよね。
目の前にあるものを、どう見立てるか
ものを見つけたり、生かしたりする。この感覚は、もともと東野さんの中にあったものなんですか。

僕自身、身の回りにあるものを工夫して使うのが好きでした。誰かが手放したものだけど、見る人にとっては価値のあるものだったりする。そこの、価値観のギャップみたいなところを楽しんでいる感じなんです。最近リビセンにきた若い子には、うちの古材を見て「これは、薪にするために買っていくんですか?」って言われるくらいです。見え方が、こんなにも違うんだなって思います。
その「見え方のちがい」を、楽しんでいらっしゃるんですね。
お茶やお花には、「見立て」の文化がありますよね。以前、リノベーションの現場でお茶を点ててもらったことがあって。外でお茶を飲むとき、平たい石があればテーブルに見立てる。ちょっとした植物があれば、そこを茶室のようにする。そのときの状況を見ながら楽しむことがいいなと思ったんです。
僕らの古材との触れ合い方も、たぶん近い。いま目の前にあるものを、どう見立てるか。そのなかに、豊かさがある気がしています。
役に立たないものが、大切になる
東野さんにとって、ものの価値はどこにあると感じますか。

お金があったとしても、それだけでは、ものを買う理由にはならないなと思うんです。友達がつくっているとか、新しい気づきをもらえたとか。そういうときのほうが、心が動く。
この前、子どもに「パパのなかで、いちばん大事なものは何?」と聞かれて、考えてみたんです。そうしたら、新婚旅行中に現地の女性アーティストからもらった、陶芸の人形のようなものが浮かびました。壊さないように頑張って日本に持ち帰り、いまも家にあります。
たぶん、役に立たないものが、いちばん大事なものになり得るんですよね。高価かどうかではなく、誰からもらったか。そのものを介して、どんな思い出があるか。そこに、ものの価値がある気がしています。
その価値観が、「レスキューナンバー」の取り組みにもつながっているんですね。
リビセンではレスキューした古材や古道具に、「レスキューナンバー」を紐づけています。買い取りの履歴を残す必要があるので、それをものとナンバリングで結びつけていくんです。
個人情報まで伝えることはできませんが、「どこからレスキューしてきたんですか?」と聞かれたら、できる範囲でお伝えする。オーダーで家具をつくるときも、古材の来歴を話すことがあります。
ただの古材ではなく、誰かの家にあったもの。物語が重なると、誰かに話したくなるし、次に手放すときにも、ただ捨てるのではなく次の人へ渡したくなるかもしれない。ものが大事にされる理由を、少しでも増やしたいんです。
「捨てる」を、問い直す
今、諏訪市の旧小学校の床板を、捨てずに活かす取り組みも始めていらっしゃいますよね。

公共施設のレスキューは、この10年で本当に少ないんです。税金で買われたものは公共の財産だから、誰かの利益になることに使ってはいけない。そういう考え方が、いろんなところにあります。
でも、捨てることが本当にいちばんいいのか。それも、よくわからないじゃないですか。だから、ここに小さくても風穴を開けたいとずっと思っていました。
それで、実際に動かれたんですね。
古材をレスキューすることで、市にどんな価値があるのかをひとつずつ整理し、提案しました。買い取りの扱い、解体時の処分費、木材を活かすことでCO₂削減につながる可能性。全国でも前例の少ない取り組みとして、発信できることも含めてです。担当の職員のかたが、議会の承認をはじめ、多くの内部調整を進めてくれました。
現場には、学校のOBや、PTA会長を務めたことのあるかたも訪れ、作業を手伝ってくれました。学校の解体は、地域にとって寂しいことでもある。自分自身や、子どもの頃の思い出があるからです。姿は変わっても、そこにあった時間や想いを、次の人につなぐことはできる。その方法を模索するのが、僕らの役割なのかもしれません。
電気を選ぶことが、いちばん効く
古材や空き家を扱う中で、電気の選び方にも関心が広がっていったのは、どんなきっかけからですか。

リビセンができた2016年って、電力自由化の年と一緒なんです。原発も化石燃料もできれば避けたい。もうちょっとクリーンなのを使いたいよね、というので選び始めた。その後、「パワーシフト・アンバサダー」という活動に入りました。
最初は、正直よくわかりませんでした。「電線は、みんな一緒じゃないか」って。契約を変えても、その電気が直接家に来るわけじゃない。でも、調べていくうちに思ったんです。エアコンを我慢するとか、エコバッグを使うとか、そんなことより電気を変えるだけでずっと大きく効く。選ぶ手間をほんの少しかけるだけで、暮らしから出るCO₂を劇的に減らせる。それが、たぶん一番なんです。
日々の暮らしの中でも、大切にされている選び方は、ありますか。
長く使うものは、中古で買うことが多いですね。安いのもあるけど、つくるときのCO₂がなかったことになるので。新しく買うときは、その会社がどんな会社かを調べる。リビセンもB Corpを取ったので、じゃあB Corpの企業から買ったり、食べるものも友人が作っている無農薬のお米を買ったり。
そこには、どんな想いがあるんでしょう。
妻が、最近よく言うんです。「自分が持っている力に、自覚的でいよう」って。10年、地域で会社を続けていると、応援してくれる方や認めてくれる方が少しずつ増えてくる。まとまったお金をどこで使うか、誰に払うか。そういうことにも、それなりの力がある。だからこそ、その力を正しく使っていかないとね、と。二人でよく話しています。
「損してる」くらいが、ちょうどいい

東野さんにとって、「豊かさ」って、どんなものだと感じますか。
人と触れ合えている感じを、しっかり持てることだと思います。ものを通して誰かの思い出を感じられる。街を歩いていて友達に会える。お店に行けば常連さんがいる。自分が頑張ったことに対して、感謝してくれる人がいる。自分の力を、誰かのために発揮できる。
そういうことがきちんとうまく回っていると、豊かだなと思います。お金があるから豊かだと思うことは、ほとんどないですね。
子どもと一緒に通うスケートボードショップのコミュニティも、すごくいいんです。近くのスケートパークでは、使う人たちが自分たちで補修や雪かきをする。草が伸びていたら、知り合いが草を刈って、「(草刈りは)趣味なんで」と言って帰っていく。やりたいからやる人たちがいて、その結果として、いい場所ができている。
以前、こんな言葉を聞いたことがあります。「いいコミュニティの条件は、みんなが自分がちょっと損していると思っている状態」。損をすることが目的ではない。でも、自分の時間やスキルを誰かのために使える余裕があることは、豊かさでもあると思うんです。
「いらない」を、資源に変える

最後に、東野さんが未来に残したいものを教えてください。
「いらない」イコール、価値がないことではないから。誰かがいらないと言ったものにも、もう一度目を向けられるといいなと思っています。それは、古材や古道具だけじゃなくて、地域にあるさまざまなものにも言えると思うんです。太陽光や小水力も同じです。
僕らはそれを、地域資源と呼んでいます。身の回りにあるものを捉え直すこと。そこに気づける考え方を残していきたいですね。そうしたら、僕らはもっと豊かに暮らせると思います。
編集後記
以前、ReBuilding Center JAPANさんの店舗にお邪魔したとき、木でできた鳥の置物をひとつ連れて帰りました。その際、「この鳥はぜんぶで3羽いて、他の2羽はもうそれぞれのお家へ巣立っていったんですよ」と、レジでスタッフの方が教えてくれました。
どこかにこの子の兄弟がいて、誰かの暮らしの中で過ごしている。東野さんが話してくださった「ものが大事にされる理由を、少しでも増やしたい」という言葉は、こういうことなのかもしれません。
また、「目の前にあるものを、どう見立てるか。そのなかに、豊かさがある」という東野さんの言葉も印象的でした。
新しいものを買い足すのではなく、いま手元にあるものを見つめ直してみる。誰かから誰かへ渡ってきた道のりに想いを巡らせてみる。すると、「いらない」と思っていたものにも、まだ見つけていない価値があることに気づくかもしれません。
古材や古道具だけではなく、人も、地域も、きっと同じ。身の回りにあるものをもう一度見つめ直すことが、豊かさを見つけ直すことにつながるのかもしれないなと感じました。
株式会社ReBuilding Center JAPAN
長野県・諏訪を拠点に、解体される空き家や、片付けられるお家から、古材や古道具を「レスキュー」し、店頭での販売や、家具・プロダクトの制作、空き家のリノベーションを手がける「地域資源のリユースカンパニー」。カフェも併設している。2016年秋にオープンし、今年で10年目。「ReBuild New Culture」を理念に、時間をかけて生まれてきたものの美しさや、そこに宿る想いを、次の世代へとつなぐ活動を続けている。
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