地球のために我慢するのではなく、別の視点から解決手段を。楽しく、美味しく、環境に優しいお店で循環型の社会を取り戻したい。 ー量り売り商店 POCO MUCHO 柳瀬基喜さん
ちょうどいい喜びの素が見つかるお店
ポコムーチョさんはどんなお店なんでしょうか?
オーガニックのドライフルーツや無添加のスナックなどが豊富にそろう量り売り専門店です。必要なものを必要な分だけ買っていただけます。
量り売りですか。良いですね!
ナッツ類やドライフルーツ、油、石鹸など、コンビニで売っているものの量り売り版という感じです。できるだけオーガニックなもの、環境や体に優しいものを中心に取り揃えています。
一押しの商品は何ですか?
はちみつとピーナッツバターですかね。店内には、その場で絞るピーナッツバターの機械もあります。
ええ!美味しそう…!なんだかお腹が空いてきました… こんな素敵なお店、どのような経緯で始められたのですか?
話すと少し長くなるのですが… 以前は、IT事業に従事していたので、自分が見たいものだけを画面越しに見る日々で、何がやりたいのか、何が幸せなのか、そのうち自分の立ち位置が見えなくなってしまいました。
IT事業… 今のお店とは真逆のものに思えます。
そうなんです。一度ITとは真逆の世界に踏み込んでみようとインドで瞑想修行をしたり、遊牧民と生活したり、岡山県の山中の自然食宿に飛び込んで丁稚奉公に勤めさせてもらったり…。
すごい行動力…!
研修先の岡山で、師匠に「食べ物を変えると人生が変わる」と教えられました。
どのような意味でしょうか?
実際、ジャンクフードから穀物菜食中心の生活にしたことで、深い睡眠を取れるようになり、15kg体重が減り、体力・体幹もつきました。表面的な変化だけではなく、自分がどの程度空腹状態にあるのか俯瞰して感じ取れるようになったことで、美味しそうな写真に唆られて食べたり、流行りのダイエット方法に沿って食べることもなくなったと思います。
食べ物ってやはり大きいんですね。私も食生活気をつけないと…
なによりも、毎日3度のご飯にありがとうという気持ちを持って食べることで、不思議と生きることに自信がついていきました。
やはり感謝の気持ちは大事ですね。
そんな中、実家の村が九州北部豪雨の被害に遭ったんです。復旧作業が一段落したある日、曾祖父の名義で植林した杉の木が満期になったとの通知が届きました。60年前は、杉を大量に伐採して高値で売っていた時代です。自分が恩恵を受けたように、植林することが孫たちのためになると思って曽祖父が植えたようです。
ひいおじいさんの思いの詰まった杉の木が、出荷できるようになったんですね。
しかし、現在日本の木材供給の70%以上は輸入に頼っている状況で、木材を市場に出すにはかなり費用がかかってしまいます。手入れにも多額の費用がかかるので、放置されていることが多いのですが、適度に間伐していかないと、日が当たらずに根がしっかりと生えない状態になってしまうんです。そこへ豪雨のように大量の水が一度に集中すると、流木として流れてしまいます。
なるほど。自然災害による被害の一因になってしまうんですね。
そうなんです。孫世代のために何かを残したいという曽祖父の気持ちが植林という行動に至ったのであれば、近年急激に増えている自然災害に対して、今自分にできる行動を起こさない理由はない、と覚悟を決めました。
そこでお店を始める決心をされたんですね
はい、岡山での研修生活を卒業・下山し、スーパーを訪れると使い捨ての商品で溢れていました。中にはお買い得の「見切り商品」と書いたダンボールの中に入った野菜もあって、とても寂しい気持ちになりました。
これまでは毎回の食事を感謝の気持ちでいただいていたのに…
「ありがとう、ありがとう」と言いながら、畑で必要な人参を収穫していたそれまでの生活から一変して、過度に包装された商品に溢れた生活。もちろん消費者に安全が考慮されているのだと思いますし、畑から土付きの野菜をそのままスーパーに並べて、売れなければゴミ処理場で焼却され本末転倒です。
過包装も仕方ない部分があるのでしょうか…
ただ、みんなが美味しいものを必要な分だけ買えば、包装から無包装に、使い捨てから使い切りに、パック売りから量り売りにできるのではないかと思いました。そんな買い物の場所が1つの形としてあれば、少なくとも自分は喜ぶし、自分が喜ぶことで他人を喜ばすことができる。もちろん環境負担も減りますよね。
少なくとも私も喜びます!!店名の「POCO MUCHO」にはどのような意味が込められているのでしょうか?
スペイン語で、多すぎず(mucho)少なすぎ(poco)ない、自分にとってちょうどいい喜びの素が見つかるお店にしたい、という想いを込めています。
ズバリ、お店のコンセプトは何でしょうか?
日本にもともとあった循環型の社会を、現代に合わせた形で実現することでしょうか。
循環型の社会といいますと…?
江戸時代ってありますよね。
はい。江戸時代と何の関係が…?
江戸時代は250年くらい続いて、当時の日本の人口は3000万人くらいでした。当時の経済成長率は0.5%くらいだったのですが、外国からの輸入はほとんどしていないですよね。お米だってなんだって完全に循環型の社会だったんです。
確かに、日本は鎖国していましたし…
一方で、現在日本のエネルギー自給率はたったの8%です。昔は1つの社会の中で経済を回せていたのに、今はできていません。今の日本は海外が発祥の、SDGsだとか、サーキュラーエコノミーだとか言っているけれど、元々は日本にも循環型の社会があったはずです。
それを今の時代でどう再現していくか、ということですね。
醤油や塩、味噌などを昔のように量り売りしようとするのは、あまりにも安直すぎます。江戸時代の売り方をそのまま真似したら、全部発酵してしまって美味しくなくなってしまいます。現代に合った形を模索し、24時間365日、同じ温度、同じ湿度に店内を保つようにしています。
別の視点から解決手段を
お店で特にこだわっていることはありますか?
プラスチックなどのゴミを一概に否定しないことですかね。
そうなんですね。ちょっと意外です…!
ヨーロッパでは、プラスチックを使わない・包装をしないお店が広がっていますが、プラスチックは私たちが利便性や衛生さを求めた結果、普及したものであり、善悪で語るものではないと思うんです。
善悪といいますと…?
当たり前にスマホを持つような時代になったのに、スマホは悪だ!黒電話に戻りましょう!といっても戻れないし、酒は悪だ!と言われても飲みたい気持ちと同じです。
確かに、黒電話には戻れないです。お酒も飲みたいし。
単にプラスチックを否定するのではなく、長く使ってもらえるやり方を考えてみたり、代替となる何かがないか調べてみたりすることが大切だと思うんです。昔のやり方でもいいですし、最新のテクノロジーでも。
プラスチックも、スマホも、お酒も使い方次第ですね。
プラスチック製品の良いところは採用して、最後まできちんと使い切ることを推奨しています。お客様にはジップロックやタッパーを持って来てもらうのですが、何回でも何回でも使いましょうと言っています。我慢の上に成り立つものではなく、別の視点から解決手段を模索することが大切ですよね。
その点は、ハチドリ電力にも通じるところがある気がします。全く我慢しなくても、生活に必ず必要な電気を使うことで、地球や社会に貢献できる仕組みになっていて。
そうですよね。そういえば、最近レジ袋が有料化されたじゃないですか。個人的にはすごく楽になったんです。買い物する時にレジ袋に勝手に入れられなくなったので。
その気持ちすごく分かります…!
うちの店では、通常3円くらいのレジ袋を、30円や50円といった10倍以上の値段で売っているのですが、このレジ袋有料化の機会に、お店として何ができるか?考えたんです。
どんなことを始められたのですか?
意外と家に要らない紙袋ってあるじゃないですか。それを店で回収して色々な人に使ってもらう。使い終わったら、家にあるまた不要な袋を持ってきてもらう、というような取り組みを始めました。
紙袋ですか。要らないものを回収して色々な人に使ってもらうって、まさに循環していますね!
エコバックは、エネルギーの観点からすると、1万回くらい使わないと全く回収できないそうなんです。そうであれば、あるものを使うのも手かなと思います。
確かにそうですね。本当に地球のことを考えたら、今あるものを長く使うことが1番良いのかもしれませんね。他にもお店でこだわっていることはありますか?
環境に優しいお店に
生産者さんに直接お会いして、その人たちがどのように作っているかを自分の口でお客さんに説明しています。この人が作りました!と写真を載せるだけでなく、1つ1つ自分のフィルターを通して、商品としてきちんとお客さんに伝えたいなと思って。
そうなんですね!その方がより生産者さんの顔が見えるお買い物ができる気がします。
あとは、大前提として、美味しいことがありますよね。どれだけオーガニックやフェアトレードを謳った自然や社会に良いものでも、品質が悪ければ商品としては価値がなくなってしまいます。食べ物であれば美味しいこと、石鹸であればきちんと洗浄力があること。当たり前の商品として使えることが1番です。
確かにそうですよね。美味しいもの、きちんと使えるものでないと、継続的に売っていくことは難しいですよね。
美味しくて、環境に優しくて、楽しいことが大切だと思います。ただ、これはお客様の立場では逆です。まず、お店に入ってきてワクワクして、食べてみて美味しくて、それが結果的に環境にも良かったら…。
それってすごく良い流れですよね。
これって環境に良いですよ!体に良いですよ!だから食べませんか?ではなく、まずはワクワクして、美味しくて、それが環境にも優しいというのが理想ですね。
私たちも、これまで環境問題や社会課題に特別興味があったわけではないけれど、電気代が安くなるからという理由でお申し込みいただいた方が、ハチドリを使うことで結果的に地球や社会に貢献してくれれば良いなと思っているので、ここは似ているかもしれませんね。
そうですね。もう1つ、ハチドリ電力と自分の思いにはリンクするところがあって。必要なところにお金がまわる仕組みにしたいと思っているんです。
ハチドリのNPOへの寄付の仕組みと似ていますね!
現在の社会では、都会は消費の文化、地方は生産の文化で、地方で生産したものを都会で消費するシステムになっていますよね。都会の消費をうまくまわすことで、必要なところにお金が回るようになって、オーガニックやフェアトレードのものにお金が落ちるようになると思うんです。
オーガニックやフェアトレードのものって、どうしても高くなってしまうイメージがあるのですが…
そうですよね。今はオーガニックやフェアトレードのものは高いけど、そこにきちんとお金が落ちて、ロットが増えれば安くなっていくと思います。
ハチドリ電力へのお申し込みの決め手となった理由を教えていただけますか?
ハチドリ電力スタッフの菊池さんがよくお店に来てくれていて、事業のことは聞いていたんです。この子が言うなら間違い無いだろうと思って人で採用しました!
そうだったんですね…!
他の電力会社をネットで見たり、話を聞いたりしたことはあったのですが、大きな会社だと、そもそもこの会社を何のためにやっているのか聞いても、マニュアル的な答えしかない返って来ないじゃないですか。
確かに…
ハチドリ電力はスタッフ皆がそれぞれの言葉でミッションが言える状態で、そこに嘘はないと思います。なので、ホームページの内容などは全然見ていないですし、料金シミュレーションもしていないです(笑)
嬉しいお言葉をありがとうございます!
電気を売っている人と直接話せるなら、質問あればいつでも聞ける関係なら、良いなと思いました。
これからもお客様とはそんな関係でいたいですね。いや、私たち、ユーザーの皆さんを「お客様」とは思っていないんです。地球環境を守る「仲間」なので…。電気を通して応援する団体には、どちらを選ばれましたか?
NPO法人循環生活研究所です。こちらのコンポストを店の前にも置いているんです。
そうだったんですね!
お客様に、コンポストの作り方教えて!言われるんです。元々、自分自身、山で巨大なコンポストのようなものをやっているのですが、簡単にできるコンポストの作り方をお客さんにも共有しています。
具体的にはどんな作り方なんですか?
毎回生ゴミをコンポストに入れるのは割と面倒くさいじゃないですか。特にベランダなどに置いてあると。キッチンにタッパーを置いておいて、米ぬかなどと一緒に生ゴミを入れておくと一次発酵が進むんです。
そうなんですね。全然知りませんでした…
ある程度タッパーに溜まってきた頃に、外にある循環生活研究所のコンポストに移すと、より速く発酵して、微生物が土に変えてくれるんです。店の外にある循環生活研究所のバッグがお洒落だというきっかけでお客様が入ってきて、実際の使い方を教えている感じです。
電気を通じた寄付だけでなく、コンポストを広めるお手伝いまでしていただいているんですね。嬉しいです!これからもぜひ一緒により良い未来のために取り組んでいけたらと思います。インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!
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