人も地域も、もう一度その可能性を見つめ直す。KEIPE株式会社の挑戦

KEIPE株式会社さま
- 地域づくり・まちづくり
- ~100名

「支えられないと生きていけないと思われている人たちが、街を支える側に回ることはできないんだろうか。」
山梨県で、就労支援を軸に、飲食店や地域資源を生かす事業を手がけるKEIPE株式会社。障害のある人を含む多様な人たちが、地域とつながる場をつくってきました。そこにあるのは、一方的に誰かを支援するための仕組みではありません。「支えられる側」と「支える側」という線を引かず、人も地域も、もう一度その可能性を見つめ直していく。 今回、代表の赤池侑馬さんにお話を伺いました。
「なんで、いい部分を見ないんだろう」

KEIPEを始められたきっかけから伺えますか。
僕の家族には、バイクの事故で障害を抱えた兄がいます。周りからは、どうしても「できないこと」や「障害」のほうに目を向けられがちでした。でも、僕から見ると兄はヒーローみたいな存在でした。すごくピュアでまっすぐで。勉強やスポーツができる、みたいな一般的なものさしでは測れない、いいところがたくさんあるんです。
だから、子どものころから、「なんで、そこを見ないんだろう」「なんでいい部分にフォーカスしないんだろう」と思っていました。本質的な部分を見ていないな、って。子どもながらに強い違和感があったんだと思います。
その違和感が、KEIPEにつながっていくんですね。
そうですね。社会に出てからも同じでした。働き方や今の仕組みから弾かれてしまう人がたくさんいる。才能や可能性はあるのに、その機会がない。兄のこととどこかで重なっていたんだと思います。だったら、その機会を自分でつくりたい。それが、就労支援の始まりでした。
課題を、解決しているつもりでも
就労支援を始められたころは、どんな想いでしたか。

実は、最初から「社会を変えるぞ」と、大きな志を掲げていたわけではないんです。創業当初は、父にも一緒に参画してもらっていました。まずは兄のような身近な人が、地元で働ける場所をつくりたい。そのくらいの感覚でした。でも、現場でいろいろな人と出会い話をするなかで、自分たちが見落としていたことに気づいたんです。
それは、どんなことだったんでしょう。
あるとき、メンバーの一人と話す中で、「〇〇さんはどうして働きたいと思うんですか?」と尋ねたことがありました。その人は、「家族を幸せにしたいから。病気で迷惑をかけたぶん、一日でも早く社会復帰したいんです」と話してくれました。
その言葉に、はっとしました。この人は社会に戻りたいと思っている。でも、当時の僕らの事業所は、施設と家を往復するだけの場所だった。 そのなかで、作業はしていても、それは本当に社会に戻る機会になっているんだろうか、と。
そこから、考えが変わったんです。「支えられないと、生きていけない」と、思われている人たちが、逆に街を支える側に回れないだろうか。地域の困りごとが、この人たちのところに持ち込まれる。そんな場所にできないかな、って。
線を引かないということ
そこから、赤池さんの人との向き合い方も変わっていったんですね。

そうですね。一緒に働いていると思うんです。「障害者」という、ひとかたまりの人がいるわけじゃない。いるのは一人ひとり、性格も得意なことも違うまったく別の「個人」なんですよね。でも、社会はつい人をひとくくりにしてしまう。でも、その線を引いた瞬間に、見えなくなってしまうものがあると思うんです。
そのことを実感された出来事はありますか。
山梨県立美術館の中で、僕らが運営しているカフェがあります。その立ち上げのとき、一人「この人は、ちょっと裏方かな」と、僕が勝手に思っていた方がいて。ある朝、その方が、眠そうな顔で出社してきたんです。体調が悪いのかな、と心配して「寝れてる?」って聞くと、「夜中まで接客の動画を見て勉強していたんです」って。
それを聞いて、僕ボロボロ泣いてしまって。「裏方かな」なんて、線を引いてその人の可能性に、蓋をしていたのは僕のほうだったと思いました。結局、その方はホールに立つようになって、エースになっていったんです。お化粧をするようになったり、人前に出ることで、その人の人生が変わっていく瞬間に立ち会えた気がしました。
赤池さん自身が、線を引いていたと気づかれたんですね。
そうなんです。 KEIPEは、「支援する人」と「される人」に、分かれた場所にはしたくないんです。どうしたら、人の命が輝くんだろう。どうしたら、可能性の蓋を外せるんだろう。それは、誰かのための問いじゃなくて、僕自身の問いでもあるんです。
僕自身が、いちばんの当事者で、自分の可能性にも蓋を感じている。だから、上から何かをしてあげるというよりは、同じ人間としてどう生きていくかを、一緒に考えたい。KEIPEは、正解を与える場所じゃなくて、みんなでいろんなことを試していく。そういう、仲間のような場所なんです。
見放された価値を、発明し直す
KEIPEさんは、就労支援だけでなく、フルーツの加工や、古道具の販売など、事業の幅が、とても広いですよね。これには、どんなつながりがあるんですか。

根っこは、人と同じです。地域には、価値を見放されているものが、まだたくさんあります。空き家を壊すときに出る古い道具は、本当にゴミなんだっけ。売れなくなったフルーツは、ただ捨てられるものなんだっけ。そういう問いから、事業が生まれてきました。
桃やブドウなど、売れなくなったものを活用したり、捨てられるものを加工してジェラートにしたり。障害のある人の雇用を生むことだけが目的ではなく、地域にある課題とも一緒に向き合っていく。そんなチャレンジをしています。
人も、ものも、同じまなざしで見ているんですね。
誰かにとっては価値がないものでも、別の誰かにとっては価値があることがある。自然界を見れば、ものごとはちゃんと循環していますよね。でも社会には、「これは、こういうもの」という、関係性が固定化されてそこから抜け落ちてしまうものがある。
だから、もう一度いろんな視点で見てみる。みんなが、そういうものだと思い込んでいる関係性を、もう1回つくり直す。僕らはそれを、「発明する」と呼んでいます。うまくいくかはわからない。でも、その組み直していく感じが、僕はすごく面白いんですよ。
「やらされる」ではなく、「心地いい」から
KEIPEさんでは、コンポストやマイボトルの取り組みなど、環境にいい取り組みもされていますよね。 そうした活動は、どんなふうに生まれてくるんですか。

「これ、やってよ」と、言ったものは別にないんです。自宅の生ゴミをコンポストするのも、自然にやっている人がいる。そういうことを、心地よいと思う社員が公民連携のプラットフォームに参加しながら取り組んでいます。
僕自身は、ロスを減らしたい、電力もこうしたい、という思いがあります。でも、それはやらされるものではない。やらされた瞬間に、思考だけでやることになって、苦しくなってしまうと思うんです。「それって心地いいよね」「気持ちいいよね」と感じて選んだ結果、社会の課題も自然と解消されていく。仕事も、そういうふうにやっていきたいですね。
赤池さんにとって、ハチドリ電力に切り替えることはどんな選択でしたか。
心地いい選択でしたね。僕自身、ハチドリ電力の考え方がすごく好きなんです。メリット・デメリットがこうで、ということが先にあったわけではありません。「自分が好きな人たちが、こういう取り組みをしているんだったらいいんじゃないかな」という感覚です。
導入にあたっては、コーポレートチームと説明の場をつくりました。「いいよね」「分かる、分かる。じゃあ、すぐ変えちゃうか」という流れで、切り替えました。KEIPEには、環境に強い関心を持つ人もいれば、別のテーマを大切にしている人もいます。多様な価値観があっていい。押しつけずに「これ、心地いいよ」って共有していけたらいいなと思っています。
「何を得られるか」より、「何を残せるか」

赤池さんにとって、「多様性」や「共生」とは何だと思われますか。
僕のなかには、「命は対等」という感覚があります。多様な人を受け入れよう、ということだけではない。ひとりひとりの命や生き物と、ただ向き合うことです。ラベリングしない、ジャッジしない。それは難しいことですけどね。
人と向き合っていると、僕もイラっとしたり、悲しくなったりします。でも、そんな自分も、否定せずに「これも、味わい深いな」と思えたら。相手のことも、自分のことも、ジャッジせずにいられる。すごくシンプルなんです。その人の命が、どうしたら輝くんだろう。僕の命が、どうしたら輝くんだろう。結局、そこに尽きるのかなって。
最後に。赤池さんが、未来に残していきたいものは何ですか。
最近は、自分が何を得られるかではなく、何を残せるかを考えてみようと意識しています。自分が本当に光るものを選んでいるか。自分に素直に生きられているか。その純度を上げていきたいなって。
障害や働くこと、お金の価値観も、これから大きく変わっていくと思います。それでも、人が人であること、ラベルを貼らずに命そのものと向き合うことは残していきたい。
そして、制度やサービスの対象になりにくい、引きこもりの状態にある人や、生活に困っている人も含めて、誰もが社会とつながる接点を持てるようにする。働くことは、そのための、大切なツールのひとつなんです。
一緒に働くことは、そんなに難しいことではない。与えるだけではなく、僕らもケアされ、癒やされ、学びや気づきをもらえる。そのことを、これからもみんなと共有していきたいです。
編集後記
取材の中で、赤池さんが何度も話していたのは、「線を引かない」ということでした。例えば、お野菜。同じ野菜でも、雨が降ったあとは水分をたっぷり含んで味がやわらかくなり、晴れの日が続けば味がぎゅっと締まる。昨日と今日でさえ、まったく違う表情を見せてくれることがあります。
人もきっと同じです。私たちはつい、「この人はこういう人」「これはこういうもの」と決めつけてしまいます。でも、その一面だけでは見えないものがあるのかもしれません。
赤池さんのお話を聞いていて印象的だったのは、そのまなざしが、人だけでなく、地域やモノにも向けられていたことでした。
人も、地域も、ものも。もう一度見つめ直してみる。その先に、まだ気づいていない価値や可能性があるのではないか。赤池さんのお話を聞きながら、そんなことを考えました。
KEIPE株式会社
山梨県甲府市を拠点に、「障がいを特別なものにせず、誰もがそこに居ていい社会にする」を掲げる会社。2017年に、障害者の就労支援から始まり、現在は、飲食店「MARLU SOUPとDELI」や、地域の規格外フルーツの加工、古道具を販売する「Cycle」など、幅広い事業を展開している。KEIPEが向き合う“障がい”とは、年齢・性別・国籍・病気・生い立ちなど、生きるうえで障壁となりうる、すべてのもの。人やもの、地域が持つ本来の力を、奪わない社会を目指し、「事業実験コミュニティ」として、挑戦を続けている。
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