地元・丹後のために、一生懸命お米を育てる農家さんたちのために。米作りから始める伝統的な酢作りを。ー株式会社飯尾醸造 飯尾彰浩氏
地元の新米からできるお酢
飯尾醸造さんは、明治26年創業の歴史あるお酢屋さんだと伺いました。
はい、私で5代目になります。私自身、飯尾醸造の他にも、イタリア料理店や、鮨屋、江戸前シャリ研究所の所長など、お酢に関わる様々なことをやっています。
飯尾醸造さんの代表銘柄「富士酢」は、完全に無農薬のお米で作られているんですよね。
はい。無農薬のお米に舵を切ったのは、57年前、祖父の時代でした。高度経済成長真っ只中の当時は、農薬は劇薬で、それを使ったお米からお酢を作りたくないというのが祖父の考えでした。
そんな前から環境への負荷を意識されていたんですね。
当時は、環境への配慮というより、使ってくれる人の安全を考えての判断だったのだと思います。今となっては、うちでは無農薬のお米しか使わないのが当たり前になっていますが、57年前から品質は落としたくないですね。
お酢作りは米作りから始まるのですね。
はい、農薬だけではなく、化学肥料も使っていません。さらに、ローカルのもの、地元・丹後の新米だけを使用するようにしています。また、他の田んぼで使った農薬や生活排水の影響を受けないようにするため、人里離れた棚田で米作りを行なっています。
飯尾醸造さんは、お酢の製造・販売だけでなく、ホームページでレシピや豆知識の紹介など情報発信もされていますが、これはやはり美味しいお酢をより美味しい食べ方で味わってほしいとの思いからでしょうか?
そうですね。昔は生産者は商品を作って終わりだったのですが、より美味しい・より効果的な食べ方を伝えるのも現在の生産者の役割の1つだと考えています。
食べる側としても、その道のプロが発信してくれる情報は嬉しいですね。
情報を伝えるという点では、僕自身、江戸前シャリ研究所というところの所長をやっているのですが、世界中の鮨職人から色々な質問をもらうんです。
海外の職人さんからも…!
また「世界シャリサミット」というものを毎年開催しているのですが、ここでは世界中の鮨職人50人が丹後に集い、どうしたらもっと美味しい酢飯を作れるか話すんです。
そんな国際的な会議が丹後で開催されているんですね。
参加者の3割ほどはミシュランの星を持っているような人たちなのですが、彼らに対してもノウハウを伝えることで、世界中でより美味しい鮨を広めていきたいと考えています。
農家さんたちのために
飯尾さんは、地元・丹後に色々な人を呼び込んで地域を良くしたい、という熱い思いを持っていると伺いました。
そうですね。世界シャリサミットに関しても、鮨のことなので銀座などで開催した方がメディアも来やすいんです。ただ、それだと地元にお金が落ちないですよね。
なるほど。だから丹後で開催されているんですね。
僕がやっている寿司屋もイタリアンレストランも、夜しか営業していません。なぜだと思いますか?
なぜでしょうか…?
田舎なので、夜食べに来ていただくと、そこで泊まらざるを得ないんです。こうして近隣のホテルや旅館にお金が落ちるようにしています。
なるほど!
鮨屋、イタリアンともに、客単価は少し高めなのですが、これもわざと近隣の居酒屋や焼き鳥屋と競合しない価格設定にしています。お客様を奪い合うのではなく、都市部の方に食べに来てもらうことで、地元に人を呼び込みたいと考えています。
どこまでも地元のことを考えて様々な事業をやられているのですね。
他にも、都会ではできない体験を丹後でしてもらおうということで、田植えと稲刈りの体験会を始めました。これほどまでに手作業なのは、都会の人にはかえって新鮮なはずです。
地元の農業との繋がりを大切にしてきた飯尾醸造さんだからこそできることですね。
苦労して無農薬でお米を育ててくれている地元の農家さんたちが農業で食べていけない状況は問題だと思っていて。契約農家さんからは、農協の2.5〜3倍の値段で買い取っているんです。田植え機も、農家さんに数百万円のものを無償で提供したりしています。
地元の農家さんとの強い信頼関係を築かれてきたんですね。
そうですね。自分たちでもお米を作っているので、先進的な農業に取り組んで、うまくいったものを地元の農家さんに横展開することもしています。
お酢の生産と自然環境についても伺いたいのですが、今でも一般的な米作りでは大量の農薬を使用するのでしょうか?
今でも一般的に農薬は使いますが、以前とは質が変わってきています。昔は人体への害があるかわからない状態で劇薬を使っていたのですが、今は、比較的毒性が弱いものになってきています。
そうだったんですね。
今は農薬による健康被害は、食べる側よりも、それを撒いている農家さんに起こりやすいので、この理由もあってうちでは完全無農薬にしています
徹底的に農家さんのことを考えられているのですね。農薬を使わないこと以外に、環境保護のために取り組んでいることがあれば教えていただけますか?
そもそも、人が生きていくこと自体、環境負荷がかかってしまうと思うんです。いくら無農薬でも、その作物を作ることで、元々そこにある生態系には何らかの影響を与えてしまいますよね。なので、無農薬だからといって声高に「環境に優しい農業をやっています!」とは言えないですね。
飯尾さんはご自宅の電気をハチドリ電力へお申し込みいただいたと伺いました。こちらも、実質自然エネルギー100%というのが決め手になったのでしょうか?
そうですね。僕自身、原発には反対の立場で、原発がなくてもやっていけるのではないかと考えています。一方で、太陽光発電や風力発電が100%正しいものだとも思っていません。
といいますと…?
自然エネルギーはCO2を排出しないという利点がある一方で、実際にはメガソーラーによってかなり環境負荷がかかってしまうことがあるのも事実ですよね。一長一短だと思うのですが、それでも原発よりずっとましだと思います。
そうですよね、近隣の住民の方への配慮も必要ですよね。ハチドリ電力では電気料金の1%を社会のために活動するNPOなどに寄付できる仕組みになっていますが、飯尾さんはどちらの団体を支援先として選択されましたか?
認定NPO法人ロシナンテスさんです。
どんな理由で選ばれたのでしょうか?
自分にはできない活動をされているからでしょうか。地元の活性化は自分も主体的にできるけれど、異国での医療の整備などは自分が直接的に関わることはできませんし、言ってしまえば、自分はお金を出すことしかできないので、そのような活動をされている団体さんを応援したいですね。
最後に、今後ハチドリ電力に期待することがあれば教えていただけますか?
そうですね。大きくなってもらうのが1番だと思います。ハチドリユーザーが増えれば、色々な団体へのサポートも厚くなると思うので。あとは、僕のように、ハチドリ電力を通じて団体さんの活動を知ることで、個人的に寄付しようと思うきっかけに繋がる可能性もあるので、こういった二次的な要素も期待しています。
確かにそうですね。電力というのは全ての人を巻き込める事業だと思うので、少しでも多くの方に環境問題や社会課題に対して関心を持っていただけるきっかけを作っていきたいですね。インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!
プロフィール
飯尾彰浩
株式会社飯尾醸造
5代目当主
1975年京都府生まれ。東京農業大学大学院修士課程修了。蔵人と共に農薬不使用の米作りから始める伝統的な酢造りを守っている。他にもフードロス軽減のために「ピクル酢」を開発、ピクルスブームをつくるなど、社会性と経済性の両立を意識した経営を実践中。
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