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農業にもCO2削減にも良いソーラーシェアリングを広めたい。自律分散型社会で地域の自律とリスクの分散を。

自宅の電気を申し込みました

こんにちは。ハチドリ電力の佐野です。
この度、元 パタゴニア日本支社長の辻井隆行さんがハチドリ電力の仲間に加わってくれました。この記事では、ご自身のソーラーシェアリングの取り組みや、ハチドリ電力へお申し込みいただいた理由、辻井さんが目指したい社会についてなど、様々なお話を伺っていきます!
 

まず初めに、簡単な自己紹介をお願いできますか?

大学を出ていくつかの仕事を転々とした後、31歳でパタゴニアと出会い、最初の10年近くは店舗での販売やマーケティング、卸売などを担当していました。40歳の時から約10年間支社長を務め、現在は企業やNPOなどのビジョンや戦略づくりを手伝ったり、自律分散型の社会づくりのささやかなお手伝いを始めたりしています。

 
 

辻井さんのライフワークとして、環境問題に取り組もうとされていると伺いましたが、そう思われた原点は何だったのでしょうか?

直接的な契機はやはりパタゴニアです。支社長に就任した時、日本支社が果たすべき役割は何か考えました。パタゴニアの当時のミッションは「ビジネスを通じて環境問題を解決する」であり、支社長就任をきっかけに、日本という社会の文脈の中で、環境問題はどのように取り扱われていて、現状はどうなっていて、今後どうしていくべきなのだろう、ということを仕事の中でも個人としても考え始めました。

 
今の地球には農業にもCO2削減にも良い
ソーラーシェアリングを広めたい
 

辻井さんは、畑などの上に太陽光パネルを設置しするソーラーシェアリングの取り組みをされているんですよね。

はい、ソーラーシェアリングとは、太陽光パネルと営農がセットになっている発電方法です。野菜や果物の畑や、田んぼの上にソーラーパネルを設置し、農業をきちんと維持しながら発電を行います。この方法の利点としては、再エネの推進をしながら、耕作放棄地の増加に歯止めをかけ、土壌の健全性を回復させることで炭素固定量も増やせるといった点が挙げられます。

 
 

CO2を排出しない発電だけでなく、農業を維持することもできるのですね。

はい、ある意味主役は農業です。日本の食料自給率を上げながら、それが有機農業であれば土壌も健康にしながら、植物にとって余分な太陽の光をソーラーパネルに分けてもらうという仕組みです。

 
 

植物にとって余分な太陽の光ですか。

太陽エネルギーの分配としては、3分の1のエネルギーで発電し、3分の2のエネルギーで作物が育っています。植物には、光飽和点というものがあります。太陽光エネルギーの1〜66%は光合成に使えるのですが、それ以上は植物にとっては無駄になってしまう、というものです。

 
 

その残りのエネルギーを太陽光パネルで有効活用しようというのが、ソーラーシェアリングなのですね。

はい。現在行われている、更地での農業が確立される前は、人間は適度に日陰があるジャングルや草むらで野草や木の実などを採って食べていましたよね。ただし、それだと毎回取りに行くのが手間なので、効率化したのが農業です。そこに、太陽光パネルを置くことで、日陰ができ、植物の成長に必要な太陽光エネルギーの66%のみ使われるようになります。

 
 

農業の面でも、CO2削減の面でも良い発電方法なんですね…!

現状では、残念ながら自然を壊しながら自然エネルギーをつくっているケースも少なくありません。森や山肌を切り開いて大量の太陽光パネルを設置してしまったり。

 
 

大規模な発電設備は、地元の方との合意がとれない、などの問題点も聞いたことがあります。

山も土も海もCO2を吸収してくれる吸収源です。せっかく自然エネルギーでCO2を出さない発電をしても、その自然を壊してしまったらあまり効果がありませんよね。きちんと自然エネルギーを普及していく手段の1つとして、ソーラーシェアリングを多くの人に広めていきたいと思っています。

 
 

ソーラーシェアリングで使われる太陽光パネルは、どのようなものなのでしょうか?畑や田んぼの上に設置することができれば、大規模に自然を破壊する必要はありませんよね。

ソーラーシェアリング用のパネルは、幅35cm、長さ2mくらいの細長いものです。それを600枚ほど設置した50kWの低圧の発電所であれば、一般家庭14件分程度の電気を作ることができます。現在、一般の人や企業にそのオーナーになってもらい、みんなでつくるソーラーシェアリングの企画をしています。将来的には、ハチドリ電力との提携もできるかもしれませんね。

 
ハチドリ電力は顔の見える電気
 

辻井さんはご自宅の電気をハチドリ電力にお申し込みいただいたと伺いました。ありがとうございます!お申し込みの決め手となった理由は何だったのでしょうか?

最も大きいのは、顔が見えることです。電力自体の切り替えは以前から考えており、色々と調べていたのですが、1回で1番納得のいくところが良いと思っていました。

 

そんな中、代表の田口さんからハチドリ電力の話を聞き、申し込みを決めました。もちろん、ハチドリ電力のプログラムも、今後もっともっと改善していけることがあって当然だと思いますが、顔が見えること、また、信頼している人と繋がることが大切だと思って。

 
 

ハチドリ電力では、電気料金の一部がNPOなど社会のために頑張る人や団体に寄付される仕組みになっていますが、辻井さんはどちらを支援先に選ばれましたか?

長坂真護さんです。

 
 

世界の電子機器の墓場と言われるガーナのスラム街にて、貧困問題と環境問題の解決にアートを通じて取り組まれている方ですね。どのような理由で長坂さんを選択されたのでしょうか?

現在の私たちの生活は、電子機器なしには成り立ちません。しかし、僕自身、長坂さんに出会うまで、自分たちが使う電子機器が役目を終え、最終処分として送られている場所で、3万人もの人がリスクを背負って生きているということを知りませんでした。

 

僕自身、一度買ったものは壊れるまで使い続けたり、エシカルパソコンを使ったりするなど、自分でできる範囲の責任は取りたいと考えているけれど、やはり自分にはできないこともあって。

 
 

自分たちにはできないことに取り組んでくれているからこそ、応援したいですね。

はい。廃棄された電子機器を燃やし、発がん性物質を吸いながらレアメタルを取り出して、それでも食べていけない人がいるという現実は変えていかなければならないと思います。それを発信し、リサイクル工場を建てるという具体的な目標を掲げて解決に向けて動いてくれている長坂さんを、寄付を通じて応援できることは嬉しいですね。

 
 

今後、ハチドリ電力に期待することがあれば、教えていただけますか?

やはり電気を売るだけでなく、作ることに期待しています。2050年までにCO2排出をゼロにするためには、再エネを作る人が決定的に足りていません。

 

そして、その作り方が何よりも大切です。地域の人たちと話し合いながら電気を作ることが必要になってきますし、僕にとってその一つがソーラーシェアリングですが、それ以外にも、地域ごとに自然環境や文化にあった方法があるはずです。将来、一緒に何かできれば嬉しいですね。

 
 

そうですね。電気を作るところまで顔が見えるにしていきたいです。

自律分散型社会への移行で
地域活性化とリスクの分散を
 

最後に、辻井さんは今後どのような社会を実現したいとお考えか、教えていただけますか?

お互いがネットワークでゆるく繋がる「自律分散型」の社会が良いのではないかと考えています。

 
 

といいますと…?

20世紀を支えてきたのは、権力やリソースを1箇所に集中させ、1つの中心を作り、様々なことを効率化させ、そこで作ったモノやサービスを分配する一極集中型の仕組みでした。例えば、行政の中心や、多くの企業、さらに日本の人口も十数パーセントが東京に集まっており、そこで経済を回し、その恩恵を地方が受けるというようなものです。電気も同じですよね。一極集中ではありませんが、大手の電力会社が巨大な発電施設を作り、各地に分配しています。

 

これにより、経済を効率的に回し、GDPが上がり、一見僕たちの生活は豊かになったように思われます。戦後の復興期にはこのやり方が合っていたのかもしれないし、僕自身もその恩恵は受けてきたけれど、今はむしろ、一極集中型の悪い面が出始めていると思うんです。

 
 

例えば…?

例えば、人口が集中することにより新型コロナウイルスの感染が拡大してしまったり、自然災害が起きた時、大きな発電所が止まってしまうと、とんでもない数の所帯や企業が停電になってしまったり。

 
 

この一極集中型の弊害を東日本大震災の際にも痛感しました。

「自律分散型」は、これとは反対の仕組みです。小さな単位でそれぞれが自律しているというもの。

 
 

具体的にはどのような状態なのでしょうか?

例えば、小さな市町村で1つ発電所を持っていて、域内のエネルギーの大半を賄う。そうすると、例えば、自然災害により大規模な発電所が壊れたとしても、自分たちはなんとかやっていける。仮に、余力があれば被害を受ける周囲の市町村に電気を送ることだってできる。反対に、自分たちが被害にあったら周囲の人々に助けてもらう。

 
 

自律分散しつつもネットワークで繋がっていれば、リスクも分散できるということですね。

もうひとつ、自律分散型の社会を目指すべき理由としては、域内循環を高めて、お金が都市に本社をおく大企業などに行ってしまう現在の仕組みを変えられるという点です。

 
 

なるほど。お金が外に出て行ってしまわないようにするということでしょうか。

その通りです。電力を1つの会社から買うというのは、その会社にそのお金が全部行くということですよね。せっかく地域おこしをして、観光などで人を呼び込んでも、外から電力を買えば、手に入れたお金が出ていってしまいます。これは、電力だけでなく、食べ物やサービスでも同じです。域内でお金が流通するよう、電気や食べ物などを域内で作ることで、自律していけるのだと思います。

 
 

ソーラーシェアリングはその意味でも、自律分散型の社会を目指す取り組みなのですね。

そうですね。また、自律したエネルギーにするには、やはり自然エネルギーを使うのが合理的だと思います。石炭火力や原子力発電所は、燃料を外から買うことになるので、いくら発電所が地元にあってもお金は域内で循環しません。山が多い山間部であれば、小水力発電所を作れば良いかもしれないですし、風が強い場所であれば、風力が良いかもしれません。

 

ただ、エネルギーシステムの転換には、例えば、景観や騒音といった問題が出てきてしまう可能性もありますよね。東京の人がやって来て「こうすべきだ!」と決めるのではなく、「これをやるとこのような良いことと悪いことがある」というのを地域のみんなで話し合って、責任を持って作ることで、みんなの電力という意識が芽生えることになると思います。みんなで共有物をどのようにするか、話し合って決める社会になってほしいですね。

 
 

みんなが自律しながらゆるく繋がることで、域内で経済を回すことで経済を活性化し、災害のリスクも減る。ぜひこのような社会を目指していきたいですね。

そうですね。自律分散型の社会への移行も、自律分散的でなければならないと考えています。1人のリーダーに権力が集中し、トップダウンで決めてしまうのではなく。これが大きな革命だとすれば、革命家のいない革命にならなければいけない、と思います。みんながその一部を担っている必要があります。その時、最も大切になってくるのは、やはり信頼する人がやっていることだったり、顔がきちんと見えることです。これは僕自身がハチドリ電力に申し込んだ理由とも繋がってきますね。

 
 

確かにそうですね。嬉しいです!自律分散型の社会の実現のために、私たちひとりひとりにできることは何なのでしょうか?

まずは知ることだと思います。今何が起きているか、自分たちは何をしていて、どのような状況に置かれているのか、それを知らないで行動するのは危険です。

 

アウトドアスポーツでも同じですが、例えば、遭難した時に、街に帰れそうな道が2本あったとします。勘だけでどちらかに行くのでは危ないですよね。今自分たちがいる場所がどんな場所で、どんな天気で、メンバーの体調はどうで、これまで辿って来た道の様子はどうだったか、というのを全部考慮した上で、どちらに行くか決めますよね。自律しながらみんなでアクションを起こす前に、ひとりひとりが考えることが1番大切なのではないでしょうか。

 
 

まずは行動を起こす前の判断材料を用意しなければならない、ということでしょうか。

そうですね。判断と決断は全く違うものです。判断は、過去から現在までに起きたことを客観的に見て整理することであり、自分はこうしたいという、主観が入る余地はありません。一方、決断は、それを受けてどうしたいかという自分の意思の問題です。

 
 

良い決断をするには、まずは良い判断が必要だということですね。

はい。それが自分の中では、知ることと行動することです。気候変動は30年前からずっと言われていることで、データもあります。判断する必要はもうない、あとは行動していくだけだと思います。

 
 

本当にそうですよね。地球温暖化という差し迫った問題。ぜひ多くの人がハチドリを通じて行動してくれたらと思います。インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!

プロフィール

 

辻井隆行

元 パタゴニア 日本支社長

1968年生。早稲田大学大学院社会学科学研究科(地球社会論)修士課程修了。99年、パートタイムスタッフとしてパタゴニア東京・渋谷ストアに勤務。2000年、正社員として入社。鎌倉ストア、マーケティング部門、卸売り部門を経て、2009年から2019年まで日本支社長。2019年秋、日本支社長を退任。現在は、自然と親しむ生活を送りながら、企業やNPOのビジョン・戦略策定を手伝いつつ、# いしきをかえようの発起人の一人として市民による民主主義や未来のあり方を問い直す活動を続ける。2016年、日経ビジネス「次代を創る100人」に選出。



 

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