和を以て世界を照らしたい。南アメリカの「ハチドリのひとしずく」のお話が比叡山の教えに重なりました。 ー宗教法人普賢寺 小野常寛氏
まずはじめに、簡単な自己紹介をお願いできますか?
東京府中市にある普賢寺住職の小野常寛です。普賢寺は、比叡山延暦寺を総本山とする天台宗のお寺です。私で43代目の住職になります。
とても歴史のあるお寺なんですね。小野さんは、以前は一般企業で働いていたと伺いましたが…
はい、新卒でベンチャー企業に就職しました。寺で生まれ育ったので、将来的に僧侶になることは考えていたのですが、大学卒業後は一般社会で働きたいと思って。
それはまたなぜ…?
祖父の影響です。私の祖父は、もともと在家出身(一般の人)で通産省(現在の経産省)で働いていたのですが、婿養子として寺に嫁いだんです。祖父の元には、色々な方が訪ねていらっしゃいました。ある日、暗い顔をしていらした方が祖父と話をされて、寺を出る際にはとても明るい顔になって帰られるのを見て、「僧侶は人を幸せにする仕事なんだ自分も人を幸せにできる僧侶になりたい」と思うようになりました。
それが小野さんの原体験だったんですね。
はい。幼少ながら、祖父の姿を見て気づいたこととしては、お檀家さんは一般の方が殆どだということです。社会を知っている方が、良い僧侶になれるのではないか?社会で働いてみてから、お坊さんになることも良いのでは?と考え、30歳までは自由に社会を経験してみようと考えました。
仏教の修行はどこかでされたのでしょうか?
私は仏教大学には行かず一般大学に入ったのですが、大学時代に休学して比叡山で僧侶としての最低限の修行をさせて頂きました。その後一般企業で働いた後に普賢寺に戻ったのですが、ブランクもあり、まだまだ未熟だと感じ、比叡山に戻って再度修行をさせて頂きました。そして修行を終えて普賢寺に戻り、住職を拝命しました。
小野さんは起業もされていると伺いました。
はい、ベンチャー企業を退職後に自身のビジネス経験を仏教界へと活かせないだろうかと考え、「株式会社結縁企画」を起業しました。
ご自身の経験を生かしてどのように仏教界に貢献したいと思われたのでしょうか?
お寺と一般の方の架け橋を作れればと思いました。日本には7万以上のお寺があると言われているのですが、その多くのお寺が明るくなれば、日本自体ももっと明るくなるのではないかと考えました。お寺関連のお悩みを自分のビジネス経験でお手伝いしたいと考え、ご縁のあった千葉県市川市で寺カフェをはじめました。
仏教界を盛り上げるべく、多くの活動をされているのですね。小野さんは「国際的な僧侶」だと伺いましたが…
調和のとれた社会の架け橋に
私は中学生の頃から英語が好きで、都立国際高校という国際色豊かな高校に進学しました。大学時代にはアメリカに留学もして…
そうだったんですね。海外へ出たことで、小野さん自身にどんな変化がありましたか?
それまでの日本で培った「当たり前」が、世界では「当たり前」ではないことに気づきました。その価値観の違いが、とても魅力的に感じました。また、海外に行くと「日本代表」として扱われることもあるので、どれだけ自分が日本のことを知らないか、ということも痛感しました。「伝えたいのに伝えられない」という原体験から、国際的な僧侶を志すようになりました。
「国際的な僧侶」としてのご自身の立場から、どんなプラスの作用を仏教界や社会に及ぼしていきたいとお考えですか?
一口に仏教と言っても、日本仏教は世界的に見ても非常にユニークなんです。お酒を飲めたり、結婚できたり…。仏教という言葉で括ることは難しく、東南アジア、チベット、色々な仏教があります。アメリカでも仏教徒は増えています。
へえ、アメリカでも!
私はこの色々な仏教、また色々な価値観があって良いんだと考えています。「多様性」や「差別をしない」というのは、仏教の根本的な考え方に根ざしています。
そうなんですね。仏教ってもっと保守的なものなのかと思っていました。
この多様性というものを大切にしながら、日本の僧侶として和の世界を構築していきたいと考えています。日本仏教は日本仏教として完成しており、素晴らしい教えや伝統があります。この魅力をどのように世界に伝えて調和し、高めあっていくかを考えなければなりません。
具体的には…?
例えば国内だけでなく、東南アジアの上座部仏教の僧侶や他宗教とのコミュニケーションを積極的に行い、架け橋となって相互に理解し信頼関係が築くことが出来れば、と思います。それが出来れば、和の社会の構築に近づけると思っております。
英語が堪能であるというご自身の強みを生かして架け橋になりたい、ということですね。「国際的な僧侶」として、どのような世界を実現していきたいか、ビジョンがあれば教えていただけますか?
調和が取れた社会にしていきたいと考えています。「和を以て貴しとなす」という聖徳太子の言葉がありますが、和を成し遂げるのはそう簡単ではないと思うんです。島国である日本は、和の取れた文化がある程度出来上がっているけれど、例えば異国や紛争地域に行けばまだまだ争いがあったり…。
そうですよね。調和の取れた世界の実現のためには、何をすべきなのでしょうか?
先程も触れたように、多様性を重んじることが調和に繋がると思います。慈悲という精神を各々が持つことで、調和の世界が実現できれば…。
多様性を重んじることで実現される調和とは…?
例えば、今アメリカで大きな問題となっている人種差別や階級差別の問題に関して、僧侶という身から言えば、自分自身の心できちんと安心を保つことができれば解決の道筋が作れると思っております。そして、その環境を作って行くことが仏教の果たす役割だと思います。
環境づくりですか。
坐禅や写経といった仏教の修行は、自分の心に安らかな場所をつくるために行うと思っております。自らの心が安らかであれば、人に対して瞬間的に感情的になったとしても、爆発することは少なくなるはずです。それにより和が成し遂げられると考えています。ですので、究極的には、和の社会・調和のとれた社会を作ることが自分のビジョンですね。
仏教の教えと「ハチドリのひとしずく」の物語に共通点があると伺いました。
比叡山の伝教大師最澄様の教えに『一隅を照らす、これ則ち国宝なり』という言葉があります。
どのような意味の言葉なのでしょうか?
一隅は「ひとすみ」という字を書きますが、世界を見れば自分がいるのは地球の片隅でしかありません。しかし、一隅を照らすことこそが、国の宝であると仰られました。今で言えば、世界の宝かもしれません。
自分がいる一隅を照らす、とは具体的にはどんなことなのでしょうか?
自分のいる場所で精一杯の努力をすること。地球を広く照らすのは太陽にしかできないですが、自分自身の世界を照らすというのは誰にでもできます。世界とは、他ならぬ自分自身が生きている現実そのものです。「ポストにベスト」という言葉もありますが、自分が持っている火種に火をつけて照らすことができれば、世界は明るくなるということです。
なるほど。この言葉と「ハチドリのひとしずく」の共通点とは…?
この言葉は色々な解釈ができますが、私は「全世界で一隅を照らす人が増えれば世界が明るく素晴らしいものになる」ということだと思います。これは「ハチドリのひとしずく」のお話の「自分ができることをやる」ということと通じていますよね。
「ハチドリのひとしずく」のお話は、南アメリカの先住民に伝わるものですが、仏教が生まれたアジアでも同じ考えがあるんですね。
そうですね、仏教だけでなく、世界中にこのような考えがあり、人間が目指すべき姿が語り継がれていることが本当に素晴らしいですよね。
普賢寺さんは、お寺の電気をハチドリ電力にお申し込みいただいていますよね。ありがとうございます!お寺ではどのようなところに電気を使うのでしょうか?
普通のお家やオフィスとあまり変わらないと思います。お客さんが来る場所の暖房や冷房などです。
そうなんですね。お申し込みの際に料金シミュレーションはされましたか?
実はしていないんです。以前から自然エネルギーを使いたいとずっと考えていたのですが、お寺の屋根に太陽光パネルをつけるのは初期費用もかかるので手が出ませんでした。しかし、ハチドリ電力は、実質自然エネルギー100%ということで、電気料金の安さよりも、自然エネルギー利用に賛同して申し込みを決めました。
料金よりも環境への負荷を減らしたいとの思いから、ハチドリにお申し込みいただいたんですね!嬉しいです!
持続可能性、最近良く言われるSDGsは仏教でも通じるものがあるんです。エンゲージド・ブディズム(Engaged Buddhism)と言うのですが、日本語では「社会参画型仏教」と訳されます。社会に積極的に関与していく仏教ということで、東南アジアなどではこの考え方が大きくなり、エコテンプルにする動きも増えています。
エコテンプルですか。初めて聞きました。仏教界も時代の最先端を行っているんですね。
ただ、私自身の寺をエコテンプルにするのはハードルが高かったのです。そこでハチドリ電力の話を聞き、印象深く、賛同できるものだったので申し込みを決めました。
ハチドリ電力では、電気料金の1%を社会のために活動する人や団体に寄付できる仕組みになっていますが、支援先としてはどちらの団体を選択されましたか?
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンさんと循環生活研究所さんを選びました。
その2つを選ばれた理由はありますか?
まず、フリー・ザ・チルドレン・ジャパンさんは、子どもを対象としているからでしょうか。
それはまたなぜ?
私の原体験として、ダライ・ラマ法王様が来日した際に質問をしたことがあるんです。「資本主義が進み、争いの時代・困難な時代がやってきましたが、仏教はどのようなことをしてくべきだと考えますか?」と質問をしました。法王様の答えは、ズバリ「子どもの教育」でした。
仏教が行なっていくべきこととして、子どもの教育ですか。
子どもに競争心や貪りの心を与えてしまう現代社会において、教育をしっかり行うことで未来の世界はきっと明るくなるということです。この法王様のメッセージが心に響きました。安心して子どもたちが生きられるようにすることが、大人の使命であり責任だと思い、子どもを対象とする団体を選定しました。
支援先を選ぶ基礎にも仏教の教えがあるんですね…!NPO法人循環生活研究所さんを選ばれた理由はいかがですか?
仏教には諸行無常、常なるものはない、という考え方があるのですが、「循環」という理念は仏教徒としても通じるものがあります。この考えができれば、パイを取り合うのではなく、循環して、「少欲知足」の欲を少なくし、足るを知れる世界になるのではないかと思うのですが、これに取り組んでいる団体に感銘を受けました。
そうなんですね。仏教の考え方は色々なところと通じるものがあるんですね…!
本当は全ての団体を支援したかったのですが…。寺を護持・発展させ、もっと沢山の団体を将来的に応援していきたいです。
最後に、今後ハチドリ電力に期待することがあればお聞かせいただけますか?
「見える化」を進めて欲しいですね。自分たちが使う電気がどう生まれてどう使われるか、透明性を持って知ることができれば、他のお寺にも、化石燃料以外の選択肢があるよ!お寺の理念とも合っているよ!と声高に伝えることができると思います。
確かにそうですね。理念に賛同して多くのお寺がハチドリ電力を使ってくれたら…。
あとは、支援している団体とのコネクションが増えれば…。電気を使うだけでも支援が出来る方法がありますよ!と周りに伝えていきたいです。
とても気軽にできる支援の仕方ですもんね。地球環境を守るため、より良い社会のために、ぜひ一緒にハチドリの輪を広めていきましょう!インタビューへのご協力、ありがとうございました!
プロフィール
緑豊かな東京郊外にある天台宗の寺院です。日々、来てくださる方やご縁のある方の幸せをお祈りしております。笑顔があふれる世界になるように、地球や人、あらゆる生き物に対して慈しみ、和の心を育むことができる「フレンドリーな」お寺を目指して精進しております。
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