「やりたい」を信じられる心身へ。株式会社ココルフ・近藤公利さんが描く、ジムのない未来

株式会社ココルフさま
- 地域づくり・まちづくり
- ~100名

山梨県・甲府市で、「Private gym THE BANANA(プライベートジム・ザ・バナナ)」 を運営する株式会社ココルフ。代表の近藤公利さんは、かつてボディビルダーとして日本一を目指していました。しかし今は、こう語ります。「うちは、筋トレしないジムなんです。」
なぜ日本トップクラスのボディビルダーが筋トレを手放したのか。なぜジムを営みながら「この世からジムをなくしたい」と語るのか。近藤さんが見つめるのは、筋肉や体型の変化ではなく、自分の「やりたい」を信じられる心身のあり方でした。
近藤さんが考える「健康」と、その先に描く未来について、お話を伺いました。
筋肉を鍛える前に、日々を整える

「筋トレしないジム」というコンセプト。具体的には、どういうことなのでしょう。
僕は元々、ボディビルをやっていて、筋肉をつけることに特化した競技をしてきました。もちろん今も、筋肉をつけること自体はいいことだと思っています。
でも、ジムで筋トレをして、フォームが綺麗になって、数値が良くなったとしても。たとえば女性なら、O脚の癖がそのままだったり、猫背がそのままだったり。お客様の根本的な悩みが改善されていない場面を、たくさん見てきました。表面的には変わっていても、本当に変わるべきところは変わっていない。そんな違和感がありました。
根本を変えるには、どうすればいいのでしょう。
鍛えるよりも先に、やるべきことがあります。呼吸や自律神経、脳の機能など包括的な介入が重要となります。特に呼吸は真っ先に改善するべき、なによりも、道具もお金もいらないし、いつでもできます。呼吸は、肩こりや腰痛、集中力を改善していくための土台だと考えています。
僕らが、お客様と関われるのは週に1〜2時間。でも、1週間は168時間あります。だからこそ大事なのは、残りの時間です。家でできることが増えること。自分の体との向き合い方が変わること。そのほうが、長い目で見ればずっと大きな変化につながると思っています。
実際に、独自のアプリを使用しながら、 家でもできることを2〜3つお伝えして、次の週まで続けてもらいます。寝ながらできることもありますし、特別な道具も必要ありません。ジムで過ごす時間だけではなく、日々の暮らしそのものが整っていく。そのためのお手伝いをすることが、僕たちの役割だと思っています。
我慢ではなく、自分の身体を知る

通われている方は、どんなふうに、変化していくのですか。
「楽になった」「よく眠れるようになった」「痛みが取れた」。そういう不調の改善を実感される方が多いですね。呼吸を整えることで、その場で痛みが軽くなったと感じる方もいます。面白いのは、そういうことを続けていくと、 結果的に体重が減っていく方も少なくないことです。
筋トレしないのに、体重が減る。それは、なぜですか。
たとえば、イライラすると甘いものが欲しくなることがありますよね。一般的には、「甘いものをやめましょう」「我慢しましょう」と、起きた行動に対してアプローチすることが多いと思います。でも、そもそも「我慢」って、長続きしませんよね。そうではなくても、そもそも甘いものが欲しくなる原因に目を向ける。自律神経であったり、血糖値の乱高下が影響します。これらは意思だけではコントロールしづらく、生物としての仕組みが関係していることも少なくありません。
イライラや疲れって、なんとなく目に見えないものだと思われがちです。でも実際には、ホルモンや血糖値の変化に体が反応しています。原因を知って、それに対処していけばいいんです。我慢するよりも、まずは自分の体で何が起きているのかを知ること。そのほうが、ずっと自然に変わっていけると思っています。
筋肉がなくなったとき、自分には何が残るのか

近藤さんご自身が、筋トレをやめられたのはなぜですか。
最初に筋トレを始めた頃は、自分のことがあまり好きではなかったです。20代前半まで、ずっとモヤモヤした気持ちを抱えていて。何かに打ち込むことで、自分を変えたかった。その対象が、たまたま筋トレでした。
ジムで出会った方から「君は世界に行けるから、行きなさい」と言われて、本気で取り組むようになりました。必死に続けるなかで、数年で日本トップクラスまでいくことができて。体も大きくなって、周りから「すごいね」と言われることも増えました。承認されたい気持ちは、きっと満たされていったんだと思います。
そこから、なぜ手放すことに。
あるとき、ふと思ったんです。「この筋肉がなくなったら、近藤公利という一人の人間に、何が残るんだろう」って。ブランド物なら脱げばいい。でも、筋肉は脱げないじゃないですか。10年以上積み重ねてきたものを全部手放したら、自分には何が残るんだろう。その答えを知りたくなったんです。
それで、たぶん思ったその日か、次の日には筋トレをやめていました。周りからは「もったいない」「怖くないの」と言われました。でも振り返ってみると、何かを失ったというより、自分の欲求の向かう先が変わっただけなんですよね。
自分の感覚で選ぶということ

近藤さんは、自分の感覚を大切にされている印象があります。ハチドリ電力を選んだときも、そうした感覚はありましたか?
山梨の経営者仲間であるKEIPE株式会社の赤池さんとのつながりで、ハチドリ電力を知りました。正直に言うと、僕は自然エネルギーや社会課題に対して、もともと特別意識が高かったわけではないんです。でも、ある勉強会でボーダレス・ジャパンのCOOの鈴木さんのお話を聞いて、「社会にいいことをしている会社」という表面的な印象だけじゃなく、その裏側にある泥臭さや熱量に触れることができました。
ちょうどその頃、別の電力会社に問い合わせをしていて、説明が分かりにくかったり、どこに聞けばいいのか迷ったりしていた時期でした。そんななかで、ハチドリ電力のホームページを見たときに、「笑顔が出てくる電力会社ってあるんだな」と思いました。電力会社のホームページを見て、そんな気持ちになることって、あまりないじゃないですか。
自然エネルギーという言葉そのものよりも、その先にいる人たちや、そこに集まるコミュニティに惹かれました。だから僕にとっては、「選ばない理由がないな」という感覚でした。心地いい選択だったと思っています。
山梨を、世界一のウェルネス県へ

近藤さんにとって、本当の健康とは何ですか?
うちのビジョンは、「心身の制限をなくし、誰もが“やりたい”を実現できる社会へ」です。僕は、この「やりたい」を、いちばん大事にしてほしいと思っています。「やりたい」を、いちばん素直に信じられていたのは、いつだろうと考えると、やっぱり子どもの頃なんですよね。だから僕らが目指しているのは、多くの方を子どもの頃のように、自分の「やりたい」を信じられる心身を取り戻すことです。
うちのジムは子ども連れも大歓迎です。高級感のある空間で子どもが走り回っていることもあります。でも、それの何が悪いんだろうと思うんです。もっと自然に、自分らしくいられる場所があってもいい。そういう状態こそ、僕が思う「健康」に近いのかもしれません。
これから、山梨で実現したいことはありますか?
山梨を、世界一のウェルネス県にしたいという野望があります。富士山や富士五湖、日照時間の長さ、フルーツ。山梨には、この土地ならではの魅力がたくさんあります。本来、人が心身を整えるために必要なものは、特別なものばかりじゃないと思うんです。自然のなかを歩くことだったり、太陽の光を浴びることだったり、季節のものを食べることだったり。山梨には、そういう環境がすでに揃っています。だからこそ、この土地で暮らす人たちが、もっと自分らしく健やかに過ごせる場所になったら面白いと思うんです。
昔は、山梨を田舎だと思っていて、早く外に出たいと思っていました。でも30歳を過ぎて事業を始めてから、散歩や自然の良さを感じるようになったんです。株式会社ココルフがなくなったとしても、この土地に何かを残せるとしたら。そんなことを考えるようになりました。
最後に。近藤さんが未来に向けて、守り、つないでいきたいものは何ですか。
実は僕には「この世からジムをなくす」という裏ビジョンがあるんです。ジムがあるから、ジムに行かなきゃいけないと思ってしまう。でも本当は、身体を整える方法って、もっと日常のなかにあると思うんです。歩くことだったり、自然のなかで過ごすことだったり。山梨には、そういうきっかけがたくさんありますからね。
今の人は、「自分は欠けた存在だ」という前提で、何かを足そうとしているように感じることがあります。でも本当は、今の自分のままでも十分に価値がある。その前提の上で、「もっと良くなりたい」と思うなら、それは素敵なことですし、そんな大人が増えたら、この社会はもっと豊かになる。そう信じています。
僕が守りたいのは、自分の感覚を信じながら、自分らしく生きられること。そして、一人ひとりが本当にやりたいことに向かって進めることです。そんな人が増えていく未来を、山梨からつくっていけたらいいなと思っています。
編集後記
取材のあと、「もっと頑張らなきゃ」と思うことが、最近どれくらいあっただろうと考えました。もっと成長しなきゃ。もっと知識をつけなきゃ。もっと効率よく。もっと良いものを。気づけば、「今の自分には何かが足りない」という前提で考えることが、当たり前になっていた気がします。
近藤さんのお話を伺っていて印象に残ったのは、「自分は欠けた存在だという前提で、何かを足し続けなくてもいい」という言葉でした。呼吸を整えることも、身体の声を聞くことも、特別な何かを手に入れることではなく、自分の感覚を取り戻していくこと。その考え方は、健康だけではなく、日々の暮らしにも通じているように感じます。
身体を鍛えなくていい世界ではなく、自分の感覚を信じながら生きられる人が増える未来。そんなことを考えながら、自分の身体の声に耳を澄ませてみたくなった取材でした。
株式会社ココルフ
山梨県甲府市で、「Private gym THE BANANA(プライベートジム・ザ・バナナ) 」を運営する会社。「心身の制限をなくし、誰もが“やりたい”を実現できる社会へ」をビジョンに掲げる。筋力を鍛えることよりも、呼吸や自律神経など、体の根本を整えることを大切にし、姿勢や自律神経を科学的に測定しながら、一人ひとりの不調と向き合う「筋トレしないジム」として知られる。子ども連れでの利用や、高齢者施設への訪問など、地域に根ざした活動も広く手がけている。プロスポーツチームや地元の高校との提携、企業向けの健康経営サポートや、経営者向けの講演・セミナーも行う。
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