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NPO法人 Reジョブ大阪
2020/07/03
【命が助かっても、失ったものがある】

こんにちは。「脳損傷者が自分らしく社会参加できる未来」を目指すNPO法人 Reジョブ大阪です。

 「ようやく仕事が軌道に乗ってきた。この山を越えたら、家族旅行にでも行こうか。」そんな中で突然あなたは倒れます。側にいた人が救急車を呼び、病院に向かい、無事に命は助かりました。

「子どもの学ぶ場所ができてよかった。。。」と。ひとりでいろんな苦労を背負っていらっしゃったんだと思いました。

今の日本の医療ではどこがゴールか知っていますか?
そのゴールは「退院」なのです。

何もかもがすっかり元通りになることを待たずに、厚生労働省が定めた期限がくれば、あなたは退院しなくてはいけません。そして高次脳機能障害のような「見えない障害」と呼ばれる病気の場合、その先の制度がとても心細いもの、心もとないものであることを、みなさんは当事者になるまでおそらく知ることはないと思います。

助かった命。失わなかったものは「命」ですが、では失ったものは何だと思いますか?
れも退院してから悟るのですが、それは「社会的役割」です。

「社会的役割」は、生きるモチベーション。
職業に関係なく、健康な大人は社会とのつながりの中で、それぞれの役割を担っています。

私たちは「退院」ではなく「社会的役割」を本人が見つけて、手に入れることをゴールに設定します。それが本当の「社会復帰」であると私たちは考えます。
もちろん、人によって、そして団体によって、何をゴールとするかはそれぞれです。患者さんにとっては、もしかするとそこが「スタート」になるかもしれません。とにかく自分にできることで行動して、一人でも多くの患者さんに寄り添う、患者家族に寄り添う、そういう行動力が大切です。

私たち「Reジョブ大阪」は、その人が「できること」で社会復帰するのではなく、その人が「したいこと」で、人間らしく生き生きと社会復帰できるように支援したい、そう思っています。

【社長が脳出血で倒れたら】

写真の、1968年大阪府生まれの彼は、35歳で多額の負債を抱えた親の会社を継ぎ、3代目社長となりました。そして見事に負債を返済し、日本の企業がほとんど進出していなかったバングラデシュに工場を設立するなど、バリバリと精力的に会社を経営していました。

事業が軌道に乗り始めた42歳のとき、外出先で脳出血を発症、15時間におよぶ手術により一命を取り止めるも、左半身麻痺と高次脳機能障害が後遺症として残ります。

リハビリ入院を繰り返しながら職場復帰を目指すのですが、そのたびにてんかんを発症しドクターストップがかかります。同時に外来リハビリ期間が終了となり、行き場を失い鬱状態となってしまいました。その後、精神科病院併設のデイサービスに通いますが、彼は精神障害ではないので適応が難しく退所します。そして月1回の高次脳機能障害者の会に参加する以外は、喫茶店通いなどで時間を潰す日々を送っていたのです。その後、「捨てる神あれば拾う神あり!」と張り切って、就労支援機関に通うようになるのですが、動かせる方の膝を悪くしてしまいました。

大金を動かし社会に貢献していたはずなのに、今は動かなくなった手で簡単な小物を製作するしかない経営者の気持ちを、そしてその家族の気持ちは想像に難くないと思います。

私たちもいつ彼のような立場になってもおかしくないような状況で、しかも、自分の望まない社会的役割を押しつけられ、「これで良し! あなたの支援は終わりね!」 とされる可能性があるのです。

「男性との出会い。そして私たちの思い。」

そんな中彼は、社会復帰の思いを断ち切れずにいました。思い悩んだ結果、自分に残された使命は「見えない障害」と言われ多くの人が苦しんでいる高次脳機能障害について、当事者にしかわからない経験と思いを書くことだと考え、47歳から体験談を書き始めました。しかし、当時は原稿を発表する場もなく、再び自宅に引きこもる生活となりました。その後49歳のときにてんかん発作で入院、リハビリを再開した際、入院先の病院で書きためた原稿を見せたのが、私たち「Reジョブ大阪」の発起人のひとり、言語聴覚士の西村だったのです。

自分に相応しい社会的役割を考え続けた彼が書いた原稿を見て、私たちも「これだ!」と感じました。出版した本を携え、販路を見つけたり広げたりする。そう、社長時代に彼が得意としていたことです。それこそが彼の生きがいです。しかし、障がい者の彼にはそれができません。書いた文字の入力もできません。新しい原稿を書くにも、意味のある言葉を、順序良く書くことも一大事ですし、感情がコントロールできず暴れてしまうことも、そしてそれを後悔することも多いのです。

私たちはこのようにご自身の社会的役割を見つけてもらうために活動しています。

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